第21話 城下の戦い その5
「はっはっはっは! 面白かったぞ! ゴミムシの分際でな!」
大猿が、低い笑い声を轟かせ、拳に懇親の力を叩きつけた。
大猿は、悲痛な声を漏らしながら激しい反動と共に吹っ飛んで行く。
「だいじょうぶですか! アルト!」
そこには、スタンディングで大型のライフル バレッタを構え撃ち続けているソフィアの姿があった。
「こいつは、魔王軍か・・・・・・」
シュティーナは、剣を抜いて構えながら驚愕の表情を見せている。
ふたりとも、少し光を帯びているので強化魔法を使っているようだった。
すぐさま表情を変え大猿に飛び込んで行く。
親衛隊長を名乗るだけあって、高速の剣裁きは早く正確で優雅さを披露していた。
「くっ! なんだ? 剣が全然通らない! 体毛を一本すら切れない!?」
激しい剣撃を繰り広げ何回か当たるが効果がなかった。
大猿は、体制を立て直すと腰から剣を抜き斬撃をシュティーナが襲いかかり、反射的に目をつぶり覚悟を決めた。
「風の精霊の加護を!!」
シェスティンは、ゴブリンに抑えられた手を噛むと、一瞬の空きをついて精霊を使った。
シュティーナの前に、空気が円盤状に圧縮さ盾のようなものが現れると、大猿の斬撃をほんの僅か緩ませた。
体が光り、素早さがアップしたこともあり斬撃をギリギリかわすことに成功し後方にのけぞった。
大猿の斬撃は空を切り激しく床に叩きつけ、床が砕け飛ぶ。
大猿が、シェスティンのほうをジロリと睨むと、ゴブリンたちが全身と口を激しく押さえた。
ソフィアが立ったままバレッタM82ライフルを乱射し城壁や柱を次々と破壊して行くが、動く大猿には当てることが出来なかった。
ソフィアは、ライフルの銃口を握ると大猿に殴りかかる。
大猿は、腰を回転して腕を振り回すと、バレッタライフルは木っ端微塵に砕け散り、そのままソフィアも壁ぶつかり動けなくなった。
「ソフィア様!! よくも、ソフィア様を!」
シュティーナが、精霊の加護を受け素早い動きで大猿の背後から力を込めて連撃を刻みつけた。
「これでも、だめなの!? どうすれば」
強化魔法を受けているシュティーナだが、まったく、ダメージを与えることができなかった。
大猿は、シュティーナを握ると激しく床に叩きつけられ何度かバウンドして倒れた。
ソフィアとシュティーナが動かなくなると、シェスティンを押さえつけていたゴブリンの一匹が、倒れた方に移動して我慢できず歓喜の声をだしながら鎧と服を脱がせ始めた。
「わっはっは、人間どもは、ゴブリンの子を生むのがお似合いだ。下等な生き物の分際で」
高らかと大猿は笑い嬉しそうな表情に変わった。
「あー、いててて、やってくれるじゃねーか」
アルトゥールは、瓦礫から何事もなかったかのように立ち上がると首をコキコキならしている肩にのったホコリを払い除けた。
「さて、続きをしようかお猿さん。 それとも、女としか相手にできないゴブリン以下なのかなぁ~?」
大猿は、嬉しそうなが硬直したかと思うと怒り狂った顔となり真っ赤になっていた。
背中からは、黒く爪がついた巨大な翼を広げ威嚇する。
「人間が、我が体に傷一つつれられないアリのような存在が!身の程をしれ」
大猿は、地面を蹴るとアルトゥール目掛けて突進してきた。
アルトゥールは、それよりも早く飛びかかり大猿の顔に一撃をいれた。
威力は凄まじく大猿の顔面を地面に激しく打ち付けられた。
アルトゥールは、大猿の胸を足で踏みつけると、拳銃を猿の顔に向けた。
「よーく聞けよ。人間をなめるな。猿」
激しくはなく、すごみの聞いた声でゆっくりとアルトゥールは言い放ち、大猿の顔面に銃を連射した。
大猿は、体毛のない顔面に銃弾を打ち込まれ、貫通はしないものの痛みで顔を押さえ、のたうち回っている。
アルトゥールは、距離をとり下がった。
「許さんぞ! 小僧!! 貴様の攻撃など通用するか!」
大猿は、胸を大きく叩くと怒号が響き渡った。
大猿の爪が伸びていき、鋭く尖って行く。
「覚悟しろ!」
大猿は、翼を羽ばたかせ今までにない速度で突進してきた。
アルトゥールは、剣を抜くと冷静に深呼吸すると体中に力を込め大猿の鋭く尖った爪が間合いに入った瞬間に、アルトゥールは、剣を振り下ろした。
それは、美しく空を切り大猿の腕を柔らかい豆腐を切るかのように一刀両断してみせた。
悲鳴と怒号が合わさったかのような声が玉座の間に響き渡った。
ゴブリンに半裸状態にされていた、ソフィアとシュティーナが目を覚ましゴブリンを格闘しながら倒して行く。
「許さん! 人間ども許さん! 町にいる人間という人間を見境なく食ってやる! 苦しんで苦痛という苦痛を与えて殺してやる! すべておまえのせいだ!」
大猿は、激しく出血する腕を押さえ、巨大な翼を広げると天井を突き破り真っ暗な夜空に飛びでた。
城下町の方に振り向くと、
「はっはっはっ! 人間どもよ! 今からお前らを食い荒らしてくれるわ。恐怖に震えながら最後の晩を楽しむがよい」
その声量は、凄まじく城で人質を助ける町の人や城下町で怯えて過ごしている人々にも響き渡り、漆黒の夜空に、巨大な羽を広げた化け物の存在を目撃することとなる。
「待ちな。猿のばけもの」
アルトゥールは、ゆっくり屋上に登って来ると静かに声をかけた。
「もう今さら止めることはできぬ。すべておまえのせいだ! お前に空を飛んで追いついて来ることはできまい! ぐはははは」
「バーカ、空に出た時点で勝負は決まっているんだよ」
アルトゥールは、大猿の方に腕を伸ばし、片目をつぶりトリガーを引くふりをした。
「バーン」
大猿は、大爆発をおこし半身が砕け散った。
上空には、無人機のプレデター旋回しており、最後のヘルファイア・ミサイルを投下したのだった。
「なんだこれは! どうなっているんだ」
何とか頭部の直撃を免れた大猿だったが、事態を理解するすべはなかった。
「この光は、一体・・・・・・」
厚く立ち込めたどんより黒い雲をかき分けるように天空から城を覆うほどの光の柱が大猿を照らしていた。
町の人々も夜空から差し込む光の柱に釘付けとなって見つめている。
城に押しかけていた、町
「神様だ! 神様がついに降臨されたんじゃ!」
町の人々は、手を止め神の降臨にどよめき立っている。
「おのれれぇ、こぞうめぇぇ!! なにを・・・・・・」
言い終えるより早く、光は大猿を中心に収束していき、眩いばかりの光の線となると、大猿は全身が焼き焦げ消滅して行った。
アルトゥールのウィンドウには、レーザー使用で膨大なリキャストタイマーがカウントされて行く。
アンデッドの軍団も動かなくなり、町の人たちの喜ぶ声が響き渡っていた。
夜空を漆黒に変えていた雲もなくなっていき、湖には、朝日が差し込み幻想的な雰囲気を見せていた。
「きれいだな・・・・・・この世界も悪くない・・・・・・」
「アルト! だいじょうぶ!?」
「ああ、無事だよ。 みんな怪我は?」
ソフィアとシェスティンが泣きながら駆け寄って、アルトゥールに泣きながら抱き無事なことに喜んでいる。
シュティーナも、目をうるませて大丈夫なことに安堵した。
その頃、王都では異変がおこっていた
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