第20話 城下の戦い その4



 「大方、片付いたかしら」

 セリアは、10式戦車を橋の近くまで移動させ、重機関銃で掃討していた手を休めた。

 「後は頼んだわよ。アルト」





 アルトゥールは、地下室から上がると城の中から、悲鳴が響き分かっていた。

急いで走って行くと漆黒の鎧をきたゴブリンたちが突入した村人たちを襲っていた。


 「あいつら! くそおぉ!」


アルトゥールは、ライフルをゴブリンに向けて撃ちまくった。

激しい怒りと悲しみをぶつけるように撃ち続けた。

ゴブリンの一部は盾と剣を構え応戦しようとするが、弾丸は、盾を紙に爪楊枝をさすかのように簡単に通過し、なすすべもなく次々と倒れて行く。


 城内にいたゴブリンの掃討が終わる頃には、ライフルのマガジンはなくなっていた。


 (レーダーに反応は、光点が2つ。一つはシェスだろうが・・・・・・レーダーに映らない可能性も考慮に入れないと)


 アルトゥールは、城のスキャンした見取り図を見ていた。

上空の無人機から送られて来る赤外線には、玉座の間らしいところに人影をいるのを確認した。


 (いよいよ、ステージボスのご登場ですかね)


 階段を上がると、大きくて豪華な扉がそびえ立った。

 

 アルトゥールは、扉にプラスチック爆弾を仕掛けると階段に身を隠した。

起爆と同時に、扉は玉座の間に吹き飛び爆煙があたりを見えなくした。

回転しながら飛び込むとシェスティンを確認し、もう一つの影に低姿勢で銃を両手でしっかり握り込むと銃弾を叩き込む。


 トリガーを何度も何度も、マガジンの薬莢がなくなるまで撃ち続けた。


 しかし、影は倒れなかった。


 「うほっ! うほっ!」

 

 そこには、毛に覆われた猿ともゴリラとも似つかない人より大きい姿をしており、口元からは、大きな牙から涎がしたたり落ち漆黒の鎧を着ている。

王座の間には、いくつかのロウソクが灯され薄暗く広い空間に、兵士や村人の骸が散乱していた。

玉座が2つあり一つには、大猿が玉座の上で手を叩いており、もう一つには、シェスティンがあられもない姿でゴブリンたちに手足を押さえつけ得られていた。

 

 「ご主人さま! 逃げてぇ!」


 「おまえを置いて逃げれるかよ! すぐに助けてやる!」


 涙ぐみながらも、嬉しそうな表情を浮かべるシェスティン。


 「けー! けっぇっけっけけ!」

 

甲高く猿のような鳴き声をすると、頭をかきはじめ両手を振り始めるとダンスをし始めた。


 「こいつ・・・・・バカにしてんのか・・・・・・」


 アルトゥールは、すぐにマガジンを交換すると連続で撃ち空薬莢が散乱して行く。

 大猿は、素早い動きで天井に片手で穴を開けてぶら下がると、次々と天井をぶち抜きながら、ぶら下がってすばやく移動して行く。


 「こいつ! はやい! だが、何発かは当たってるはずなのに」


 大猿は、地面に着地するとすぐに飛びかって右左に飛び回り、アルトゥールに迫って来る。

長い腕で大きく振りかぶりアルトゥールの身長の半分はあろうかという拳が横から叩きつけられた。


 当たる瞬間に片腕を上げ全身に力を入れ耐えつつ、拳銃を大猿に何発か叩き込む。

アルトゥールの体は、予想以上の力で殴られ体は、激しい衝撃と共に吹っ飛び柱に叩きつけられた。

柱は、半分ほどくずれ落ちた。


 「なんて、馬鹿力だ」


 大猿は、あかるさまにニヤけた表情になると、両手を前に伸ばしゆらゆら揺らし始めた。


 その揺れに合わせるかのように、まわりに転がっていた骸たちが立ち上がり始めた。


 「おまえが、アンデッドを操っていたのか!」


アルトゥールは、何千もの兵士がアンデッド化されて操られている原因が目の前にいるのを理解し唇を噛みしめると激しい怒りの顔となった。


 大猿は、また、甲高い笑い声とともに踊りだしている。


 アンデッドは、活きよいよく走り出すとアルトゥールに襲いかかる。

拳銃で応戦するも、数が多い上に全速力でこちらにはしって来る


 アンデッドは、一直線に腐敗した部分を落としながら走って来ると、ギリギリでかわすと壁にぶつかり潰れ、その威力は凄まじく壁も崩れ落ちた。


 (アンデッド化して、リミッターが外れたって感じか。捕まるとヤバそうだな)


 「すまねぇ、成仏してくれ」

 

 数個の手榴弾のピンを抜くとアンデッドに投げつけた。

無数の爆発が起こり爆煙にまぎれ、すかさず動いているアンデッドにとどめを刺して行く。

残り数体というところで、拳銃の弾丸も付きた。


片手にミリタリーナイフを構え、手早くアンデッドの急所を攻撃し倒して行く。


 「後は、おまえだけだぜ。お猿さんよ」


大猿に、拳銃とナイフを向けた。





 先程まで、手を叩いて踊っていた大猿の顔から笑みが消えさっていた。


 「おまえ、なにもだ。その力は、放置できぬな。われわれ魔王軍の障害となるかもしれぬ。ここで止めをさすっ!」


 甲高かった笑い声からは想像できないほど低く、内臓に響くかのような低音でしゃべりだした。

背中からは、大きなコウモリを連想させる翼が生えて大きく羽ばたいた。


 大猿が地面を蹴ったと思うと、一瞬で間を詰め、大きく巨大な拳を振り下ろしてきた。

アルトゥールは、打ち込まれる拳をギリギリで剣を防ぐとスーツが隆起し剣と拳がきしみ合う。

 猿のような生物がわずかに拳を引く瞬間に、腰からタクティカルナイフを取り出すと、脇腹にお思い切り突き刺した。


 だが、刺さらなかった。


 (硬い! こいつの毛か! この体毛のせいで銃弾も通さなかったのか)


 「そんな武器で我が体を貫けるとでも思ったか! 我が体に傷をつけることなど大魔王様しかおらぬわ! 部をわきまえろ! ゴミムシめ!」


 

更に大猿は、連続で拳を叩き込みアルトゥールは両腕を顔の前にあげ防御を続けたが耐えきれず衝撃で壁に飛んでいき、壁もろとも瓦礫に埋まった。


 「ゴミムシ風情が、勝てるとでも思ったか! 強さにおごり己の力量のわきまえず身の程を知れ!」


 大猿は、走り出すとアルトゥールが埋もれている当たりから両足を掴みだし、小枝を振り回すような勢いで激しく天井と床に何度も何度も打ち付ける。

衝撃は凄まじく床と天井が崩れ落ちて行く。


 「くそっ・・・・・・意識が・・・・・・ぐはっ」


 大猿が、最後に渾身の力で、地面に叩きつけるとアルトゥールは、瓦礫とともに地面にめり込んだ。


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