第19話 城下の戦い その3




 城の堀にかかる石橋周辺は、砲撃により大きな穴だらけになり周囲は砂煙が立ち込めていた。

城の入り口の巨大な城門は開かれ、アンデッド兵たちが砲弾の様子を伺いながらジリジリ門の外へ出てこようとしている。


 アルトゥールは、石橋の石で出来た欄干の残骸に見を隠すとMP5ライフルで兵士の頭を狙って撃ち込んでいが、兵士は、次々に倒れていくももの倒れた人数だけ出て来る。


 城壁からは、弓矢が雨のように降り注ぎ、大砲の砲撃が時より響いて来る。


 「セリア、城門の兵士を一掃してくれ! 狙えるか?」


 「ラジャー、おまかせあれっと」


 言い終わると同時に、10式戦車が町からそう遠くない小高い丘から赤い光が弧を描いて城門にぶつかると激しく吹っ飛び、2発,3発と着弾し爆発がつづくと城門の兵士の勢いが止まりだした。

 

 だが、城壁の上から弓矢が雨のようにさらに降り始めた。


 「セリア! 上だ! まだ、上の城壁にいる兵士をどうにかしてくれ!」


 10式戦車は、町に移動を開始しており、全速力で移動しながら激しく砲撃を繰り返す。

城壁の上部に命中すると、石は砕かれ勢いよく四方に飛び散って行く。


 その瞬間、アルトゥールは、一気に駆け込み石橋を渡り終え幾人かの兵士を倒すと柱に見を隠した。



 その間、ソフィアがスナイパーライフルを何発が撃っているが空を貫くばかりである。


 

 城の奥から、激怒した怒りを顕にした声が聞こえたと思うと、アンデッド兵が宙に舞い上がる。

まるで、木の葉が旋風に乗って舞い上がるように兵士たちは飛ばされていき、その渦がこちらに近づいて来る。


 「どけどけ! 人間の屍共! 邪魔だ! よくも好き勝手にやってくれたな! この・・・・・・おまえは、あのときの」


 3mに届こうかとする漆黒の鎧を身にまとい、巨大なハンマーを片手に持つオークの姿があった。


 「あっ! あのときのオークか! グッ・・・・・・トンだっけ?」


 「おれは! 魔王直属の特殊部隊隊長グンター様だ!」


 言いながら、巨大なハンマーを両手で握り力の限り振り下ろしてきた。


 「我が渾身の一撃、強化魔法をしてようが受け止めることはできぬ! ぺちゃんこにして! アンデッドにしてくれるわ!」


 振り下ろされたハンマーは、更に遠心力と重さが加わり速さをましてアルトゥールに叩き込まれた。


 凄まじく耳に突き刺さるような金属音が鳴り響く。


 「へへへ、受け止めれたぜ」


 アルトゥールは、背中の剣を引き抜くとグンターが振り下ろした巨大なハンマーを受けと止めた。

受け止めた本人も、どこまで耐えられるかわからなかったので冷や汗をかいて驚きの表情と安堵が混じり合っていた。

スーツの筋肉は、激しく隆起し受け止めた瞬間、衝撃で石畳はひび割れ足首まで地面に埋もれるほどであった。


 「貴様は、本当になんだ! 我が一撃を受け止めるだと! ありえん、ありえんぞ! 強化魔法をしていようが止められるはずがない、それが人間ごときに! おまえは、おまえはなんなんだ!」


 さらに、グンターは、受け止められたハンマーに体重と力を込めて押しつぶそうと激しい咆哮あげた。

アルトゥールも負けじとスーツに力を入れ剣で押し返そうとする。


 「なぜ潰れぬ! 魔王様にお力を分けていただいたこのおれ様ががああああ」


 グンターはさらに力を入れるが、意思に反して徐々に押し返されはじめる。

アルトゥールは、さらに筋肉が隆起すると思いっきり剣を振り抜いた。

グンターは、巨大なハンマーが飛ばされないように踏ん張るが、小枝が飛んで行くかのように勢いよく回転しながら飛んで行った。


 グンターは、後ろにバランスを崩したところを、ソフィアのバレッタM82の弾丸がかすめて、威力は凄まじく鎧の一部が吹っ飛び、その反動でよろめき堀の端に足を取られ深い堀に足を取られ大声で叫びながら落ちて行った。


「きさまぁぁぁ・・・・・・よくも、このグンター様をぉ・・・・・・」


 グンターは、堀の下の暗闇に消えて切った。


「なんだったんだ。あいつは・・・・・・」



 町のほうから、複数の・・・・・・集団で大声を張り上げているのが響いた。

振り向くと、町の道に沿って大量の松明があかりを灯し、それは長い道となって続いている。


 先頭の集団がアルトゥールに、近づいて来る。


 「少年! 少年ばかりに危険な思いさせてられん! 見ず知らずの少年が村のために命をかけてるんじゃ! 村のものを説得してつれてきた。みんな拐われた家族を取り戻すんじゃ!」


 そこには、マスターが松明と農具を携え汗だくになって息を切らせていた。

続々と村人がボロボロになった、石橋を越えて来る。

 

 「じゃぁ、村人の救出はたのんだぜ! おれは、城の上にいるやつを倒して来るわ」


 アルトゥールは、ウィンドウを開き、人間が捉えられている場所を手短に教えた。

 


 「おにいちゃ・・・・・・ん」


 少女の声が聞こえてきた。


 「どうして? エマ、こんなところに」

 

 「おかあさんが、こっちにいるの」


 城の壁には、砲撃により大きな穴が空いており、そこから地下へつづく階段が見えいた。



 エマが地下への階段を素早く降り、

 

「おにいちゃん、こっちだよ」


 アルトゥールは、走って行くエマをおいかけて階段を降りた。

石で覆われた階段は長く螺旋状につづいており、地獄に続くかと思う長さであった。

階段の一番下は、光も差し込まない真っ暗な闇となり、数カ所に松明が置かれていてだけで薄暗くジメジメしていた。

 ライフルにつけているタクティカルライトを付け通路を照らすと、


 「おにいちゃん! 早く! こっちにお母さんがいるの」


 エマを小走りでついて行くと扉の前で立ち止まった。

鉄扉の前には、拷問室とかかれていた。

扉ののぞき穴から、中を見渡すが薄暗く人気は感じられない。


 扉の鍵穴にライフルで数発撃ち抜くと分厚い鉄扉が開き、エマは、数本の松明で照らされる広い部屋に姿を消して行く。


 アルトゥールは、用心深く扉に入り周囲の警戒をしつつ進んで行く。


 「見てられない。吐きそうになる」


 そこには、歪な道具や機械がそこら中に点在し無数のかつては人間だったものが破損し散乱していた。

 アルトゥールは、エマの姿を追いかけ部屋の奥まで行くと、エマが待っていた。


「ママァ・・・・・・」


 そこには、ひどく損傷した骸がころがっており腕には、抱きかばうに小さな骸を抱きしめていた。


 その小さな骸にエマの顔が重なる。


 「ありがとう・・・・・・おにいちゃん。ずっと、ママをさがしていたの。やっと、ママにあえたよ」


 「どういうことだよ。おまえ、さっき迄そこに・・・・・・」


 「おにいちゃん。たのしかった。さいごにありがと・・・・・・おにいちゃんに、であえてよかった・・・・・・ママにあわせてくれて・・・・・・」


 エマと母親らしき骸が一瞬光ったと思うと、小さい2つの光が舞い上がり互いに光は回転するように天井へ消えて行く。


 「やさしいおにいちゃん。さようなら・・・・・・もっとあそびたった

・・・・・・」


 「おいおい、嘘だろ。なんだよこれ、なんだよ!」


 アルトゥールは、天井に手を必死で舞い上がる光をつかもうとするが視界が霞んで見え、溢れ出る涙を腕で拭いながら何とか掴もうとしたが叶わなかった。


 二人の骸は、崩れ落ち砂状になって行く。

アルトゥールは、その砂を両手ですくい上げると、強く握りしめて、そのまま両膝を地面に落とし激しく泣き始めた。

この世界に来て初めて生と死を実感したのだった。

スーツは激しく隆起し、床を何度と両腕で叩きつけ地下室へ振動が伝わって行く。


 「どうしてなんだ! なんであんな子が!!」


 涙が止まらぬまま、激しく怒り壁に何度も両腕を叩きつけると、壁は激しい悲鳴をあげてひび割れ崩れて行く。


 「こんな事する。魔王軍! 魔王! すべてぶっ殺してやる!」


 アルトゥールは、武器を携え地下室の階段を登り始めた。

それは、力強く激しく・・・・・・そして、悲しそうな足音をたて・・・・・・




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