城下の戦い

第17話 城下の戦い その1


 

 城下町には、厚い雲が立ち込め夜空が見えず、うっすらとモヤが立ち込め遠くまで見通せない。

活気があるはずの城下町なのに、人の数もまばらで閉まってる店も多い。


(おいおい、やばいパターンだろ? それとも異世界特有の気候なのか?)


 「ここは、湖近くで豊かな土地で活気あふれたヘルベルト領地のはずですが・・・・・・なにか、おかしいですわ」


「シェス、なにか精霊とかつかってわからないのか?」


「ここの町に来てから、精霊たちがあまり言うことを聞いてくれなくて・・・・・・」


 幌馬車 ほろばしゃを酒場の前に止めると、


「考えすぎかもしれないが、みんなで、分かれて情報収集してみよう。この酒場に2時間後集合しよう」


ソフィアたちは、馬車を降りそれぞれ違う場所に向かった。



「アルトおにいちゃん!」

 「エマ! 町にもどってたのか! 心配してたんだぞ。無事で何よりだ」

 「ごめんね。アルトおにいちゃん、しんぱいかけて」


 エマが申し訳無さそうな顔をしている。


 「あーそーだ、エマの服汚れてるなぁ。おにいちゃんが服買ってあげるよ。そこのお店いこう」


 「えっ、ほんと、うれしい」


 アルトゥールとエマは店に入り、いろんな洋服に着替えさせてあげ似合いそうな服があったが、エマが気に入る服はなかったようだ。


 「あの酒場で飲み物でも飲もうか」


 「うん!」


 元気いっぱいな明るい表情でエマが答えて、酒場に走って入って行く。

酒場に入ると、客は誰もおらずエマが先にテーブルに座っているだけだった。


 「マスター! 水とミルクをひとずつ頼む」

 顔色の悪いマスターが、すぐに持ってきてくれた。


 「エマは、ミルクのめるかい?」

 「うん! エマ、ミルクのめるよ! ミルクだーいすき」


 とびっきりの笑顔でエマが答える。

エマは、お母さんと離れるまでの生活をいろいろ教えてくれた。

お父さんはずっといないらしく母子家庭で育ったようだった。

寂しいときは、いつも人形をお母さんだとおもって抱きかかえて寂しさを紛らわせているようだった。



 「マスター、他に客がいないけど、どうなってんのこの町」


 「変わった服装だね、よそ者かい? 気をつけたほうがいい。この町は呪われているのかもしれない。厚い雲は何ヶ月もはれず、ずっとモヤが立ち込めていて、みんな怯えているんじゃよ」


 「領主は、なにやってるの? 町をまもるのが領主の役目だろ」


 「領主様は、数年前から人が変わられてしまった。年貢の納める量が一気に増えて、みんな生きていけない。毎晩のように兵士が町に降りてきては人を拐っていき帰ってきたものはいない、数人捕まえると引き上げて行くんじゃ。勝手に街から出ると領主様に殺されると言う話もある。出て行ったものからはなにも便りがない」

 

 うなだれながらマスターが続ける。

 

「わしにできるのは、なにも知らないで来た人に忠告するぐらいのものだ。だから客が来なくても店をあけているんじゃ」


 (あるある、イベントか。ラスボスは、領主ってパターンか)


 「アルトおにいちゃん、ようじがあるから、また、あとでね!」

 エマは、慌てた様子で酒場からでて行った。

入れ替わるようにして、ウェスタン扉を激しく開ける影があった。


 


 「あなたどういうつもり! 何日もメールスルーして、既読スルーですか。最低よ!」


 「はぁ? だれだ、あんた」


 そこには、金髪をふたつにくくったブレザーの制服をきた少女が立っていた。


 「だれだって!? あなた、命の恩人すらわからないの? 失礼しちゃうわ!」

 「えーと、話の要点が全然みえないんですけど」

 「ゴブリンに襲われている時、助けたでしょ。覚えてないの?頭わるいの?」


 「もしかして、戦車の!?」

 「そうよ、わたしよ。あのときの命の恩人よ!」

 「というと、おれと同じ感じってことか」


 アルトゥールは、自己紹介を済ませるとお互いの状況を話し合い、記憶がないこと、頭の中でウィンドウが開くこと。メールを送られてもバグって見れないことなど話した。

 少女は、セリアと言った、主に車両系を出せて、戦車などは一人で操作でき弾薬など補充も時間が経てば勝手にされるなど教えてくれた。


 

 「で、なにがお望みだ?」

 「お、お金がほしいの・・・・・・こっちに来てから、まともにごはんも食べれていなくて・・・・・・」

 アルトゥールは、金貨を一枚差し出して反応を伺った。


 「どうしたの!? あんた、こんな大金を!もしかして、人を襲って金を奪っているの? 最低!」


 (ひどい言われようだなぁ。なるほど、金貨一枚で大喜びか)

 もう一枚テーブルにさらに置いた。


 「これで、次なにかあったら、セリアに助けてほしいのだがいいか?」


 「やるやる! メールで連絡できないのなら、どうしよう?」


 アルトゥールは、無線機を差し出した。


 「この世界じゃ電波障害もないから、これで近距離なら大丈夫だろ」


 セリアは、酒場を後にした。


 



 

 しばらくすると、3人が一緒に酒場に戻ってきた。

 「ご主人さま、見てみて~、ソフィアが買ってくれたのぉ」


 どうやら、服屋の前で出会って、情報収集そっちのけで服選びに勤しんでいたようだ。


 アルトゥールは、マスターから聞いた話を聞かせた。

 「わたくしの国でそんなことが! もし事実なら許せませんわ!」



 酒場の外から、切り裂くような悲鳴が響き渡る。


 「領主様の兵隊だあ! また拐われるぞ!! 逃げろぉ!」


 外に出ると、悲鳴が飛び交い慌てて逃げ惑う人々が走り抜けていき、家の窓は次々に閉められて行く。

夜となり厚い雲で月は隠れており、ゴーストタウンのような静けさへと変わって行った。


  城は、多数の松明でライトアップされているかのように明るく浮かび上がある。

大きな城門が開き、城の周りには幅広い堀と唯一城に繋がる軍隊が通れるほどの石橋が架かっていた。

甲冑を着込んでランスを片手に完全武装した騎馬隊が石橋を渡って来る。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る