第16話 旅立ち 下
「なんだ! なんの声だ!」
アルトゥールたちは、周りひっきりなしに見回す。
後ろから、ソフィアたちの激しい悲鳴が上がり、振り向くと、3人は、舌のような触手状のものに吊るし上げられていた。
触手のものからは、強い粘液状のものが絶えず流れたいた。
「しまっ・・・・・・うわぁ」
アルトゥールの足元にも、無数の触手が足元を這うように伸びており、足首に巻き付くようにして逆さに持ち上げられたのだ。
周囲にいた半獣人たちも持ち上げられて、見境なしに捕獲されて行く。
森の奥からは、大きな唸り声とともに木々をなぎ倒され、無数のツルが足になってうごめく巨大な花が、中央部に大きな口を開けて現れた。
「これは、中級の食中花のモンスターよ。分泌液に触れると力が・・・・・・」
ソフィアたち三人は、無数の触手からは、分泌液が滴り落ち体中を這いずり回って分泌液をこすりつけ、服の隙間からも入っているようだった。
「だめですわ・・・・・・力が・・・・・・はいりません・・・・・・あっ」
「くっ、ソフィア様を守らねば・・・・・・」
「ご主人さまぁ・・・・・・」
シェスティンは、口の中にも触手が入り、精霊も呼びだせない状態だ。
食中花の近くにいた半獣人たちは、次々と巨大な口へ放り投げいれられ溶けていっているようだった。
逆さに釣り上げられたアルトゥールの足首にも触手が絡まり分泌物を垂らしている。
だが、中にスーツを着込んでいるので平気だった。
腰から大型のサバイバルナイフを取り出すと触手に何度も刺し引き裂いた。
落下し体を激しく打ち付けながらもデザートイーグルを抜くき、三人の触手めがけて連続で打ち続ける。
3人は、体全体に液体がまとわりつき動けないようだ。
アルトゥールは、食中花めがけてデザートイーグルで撃ち続けるが、大きすぎて手応えがない。
「どこだよ! 弱点は!」
食中花の体には、銃弾で複数の穴が空き体液と胃酸が流れ出している。
だが、触手はまだうねりを伴わせて動き、ムチのように激しく振り回して攻撃してきた。
アルトゥールは、ギリギリでかわしつつ銃撃し、すきを見てMK3手榴弾のピンを抜き口に投げ入れた。
食中花は、MK3手榴弾の衝撃波により内部から大きく膨れ上がり破裂し周囲に液体がシャワーの様に降り注ぐ。
「さーて、トラのおっちゃんは、まだ、やるかい・・・・・・次は、どうなるかわかっているよな」
トラの半獣人は、分泌液で動きにくくなった体で触手をはずして行く。
「わかった。もうあんたには手をださねぇ」
トラの半獣人は、仲間の触手を外すと森の奥へと消えて行った。
アルトゥールは、慌てて3人に近づく。
「アルト・・・・・・近くに湖があります。そこに運んでください」
ソフィア、頬を赤く染め、どうやっても分泌液のせいで動けないようだ。
「ボタンを外して」
「はぁ? それぐらい自分でやれよ」
「指もまともに動かないのよ。ボタンを外すのは無理だわ。目をつぶって外して!」
「はいはい、わかりましたよ」
アルトゥールは、3人のボタンを外し終わると、すこし離れた場所に移動した。
「お洋服、洗っといてー! あなたしかこの液体さわれないから、あっちで洗ってきてー」
「へいへい、とうとう勇者様から洗濯係へ降格ですよ。扱いひどくね?」
日も傾き始め、辺りは暗く湖と反対側の森林は昼間と違う表情となり、鬱蒼とし森の奥は深い闇へと変貌して行った。
アルトゥールは、ソフィアたちから離れた場所で服を続けていた。
手を止め、なにか音に音がすることに気がついた。
耳を凝らし辺りを見回る。
子供の鳴き声がする・・・・・・こんなところで子供?
耳を頼りに声の方向に進んで行くと、そこには、10歳に満たないであろう小さな女の子が目を激しくこすりながら泣いていた。
「なにがあったの? どうしたの?」
「ママとはぐれちゃったのぉ。ママにあいたいよぉ」
アルトゥールは、座り込み少女の頭をなぜながら
「よーし! お兄ちゃんがお母さんを探してみせるよ!」
「ほんとうに!? わたしエマ! おにいちゃんは?」
「アルトゥールだ! アルトと呼んでくれ、お母さんとは、どこでわかれたの?」
「う~んとね~ あっちのほうにね。まちがあるの」
「じゃぁ 街に向かうか。仲間もいるから馬車で向かおう」
アルトゥールは、遠くからソフィアたちの呼んでいる声が聞こるのに気がついた。
「ちょっと、まってくれ、こっちに子供が!」
しかし、辺りを見回しても子供の姿は、見当たらなかった。
しばらく探すも見つからず、レーダーの反応を見ても生物の反応はなかった。
(あれ、おれ幻覚でもみていたのか?)
「なにしてるー。早く服もってきてー」
服を洗うと持って行った。
「シェスが精霊で火を起こしてくれたのよ! 髪の毛も乾かしてくれるの」
「えへぇ、服もそこの木にかけてください。精霊ですぐに乾かしますから」
「近くに町があるようだ。遅くなる前に急ごう」
4人は、暗くなった夜道を馬車に乗り、近くの城下町へ向かった。
「ここは、城下町のはずなのですが・・・・・・」
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