第14話 王都 下
薄暗く酒のボトルが多数並べてあるカウンターから、マスターが喋りかけてきた。
「ヴァインツィアール卿ですか、貴族様でも、ゴタゴタだけは勘弁してくださいなぁ」
「マスター、売られた喧嘩だったが、すまなかった。これで修理とわびの金だ受け取ってくれ」
数枚の金貨を使い込まれ磨き込まれたカウンターに並べた。
「こんなに頂いてよろしいのですか? 太っ腹な貴族様だ。お酒も飲んでくだせー、今日は、ただにしときますぜ」
途端に、マスターは浮かれ顔になり木のジョッキを差し出してきた。
マスターに、受付の場所を聞くと立ち去り受付に向かうと、
「もう、出しすぎですよ! 次からは、私が代わりに払いますからっ」
酒場の2階にはロフト上の広い空間があり掲示板のようなようなものに様々な依頼の紙が貼り付けてあった。
受付には、かわいいメイド服で、笑顔がさわやかなうさぎの耳がついた女性が立っている。
「はい、初めての方ですね。こちらの申し込み用紙にご記入ください。さっきはかっこよかったですよ!」
(うーん、なんかよくわからない文字が書いているが読めるぞ? 脳で変換されているのか? えーと名前をと・・・・・・)
用紙には、日本語を書いたつもりだったが、こちらの世界の言語でかいているようだ。
(そういえば、言葉も普通に話せているってことは勝手に翻訳されているってことなのかな)
「こちらが、冒険者ギルドの公認カードになります。魔法が込められておりあちらの依頼掲示板で受理してないクエストも、気が付かないうちに達成された場合、カードを通して本部に連絡が来ることになっています。」
一通り説明をうけると、募集を見て、それに見合った人数でクエストを行い成功すればギルドからお金がもらえ、ギルド内の階級も上がり、より上位のクエストの受注ができるようになって行く。ギルドには、月々の登録料と一回ごとに手数料を支払う至ってシンプルなシステムである。
(完全に、まんまゲームだな)
クエストの掲示板を見に行くと、ずらりとクエストが並んでおり、階級が一番下なので、初級クエストしか受けられないので見渡す。
(なんか、よくわからない弱そうなモンスターの討伐が多いなぁ。発行元が王国だから国の政策でのモンスター狩りか、おそらく低級な簡単なやつなんだろうがめんどうくさいなぁ)
そこで、一つ変わったものが目につく。
「なになに、巨大で大きな角がついていて爆裂魔法を放つモンスターの生息地をみつける・・・・・・」
(この世界のことも、もっと知っておく必要がある。護衛付きの今なら危険度は低いだろう、これも気になる)
アルトゥールは、考え込み依頼書を掲示板から剥がすと、シュティーナに、道中に出てきそうなモンスターの討伐クエストを持ってこさせた。
受付の女の子がびっくりし、
「こんなにですか? C級モンスターのエリアで一番ランクの低いクエストなので大量にでも大丈夫ですが、大量の場合達成できないとペナルティがありますよ?」
「かまわない、だいじょうぶ。すべてやって見せる」
「大量の場合は、期限も短いですのでご注意してください。クエストが達成されたと判断されますと、自動的に依頼書は燃えてなくなり、ギルド本部に連絡が行く仕組みとなっています。 では、お気をつけて!かっこいいお兄さん!」
大量の依頼書を布カバンに詰め込みギルドを後にした。
「いいのですか? こんなに。はじめての人でこれほど受注するのを見るのは初めてですよ。アルト殿ならできるかもしれませんが」
ギルドを後にして屋敷へ向かった。
辺りはすっかり暗くなり、星空に照らされ巨大な豪邸のシルエットが浮かび上がり一人で住むには広すぎる大きさだった。
「これが、おれの屋敷?」
「そうです。アルト・・・・・・ヴァインツィアール卿のお屋敷です。ヴァインツィアール様が王都に来られた際は、こちらで休まれていたという話です。古いお屋敷ですが手入れはずっとされています」
「それでは、私の一度帰らせていただきます。また、明日の朝お伺いさせていただきますね」
シュティーナは、待機していた馬で帰って行った。
「おーい、どうすんだ・・・この時代の生活を知らないんだけどぉー」
玄関のドアをあけ、そっと中の様子を伺う。
「こんばんは~。だれかいますか~。いませんよね~」
真っ暗な室内からは、静寂が返事をしていた。
「シュティーナめー、どうしろっていうんだ。ランプの明かりの付け方さえわからん。火はどうすんだよ」
などと、人に八つ当たりを考えながら室内にはいる。
馬車で運んでもらったケロベロスは、ローバッテリー状態なのですぐさま玄関で丸くなった。
外よりも暗くなっている屋敷の部屋に踏み入れていると、コンコンコンと入り口から聞こえてきた。
アルトゥールの心臓は高鳴りをし怯えながら玄関を覗くと金髪の少女が立っていた。
「あのぉ、私、洞窟で助けていただいて、お礼を・・・・・・こちらの屋敷に移られたとかで・・・・・・」
金髪の少女の足は、血だらけとなり裸足で王宮から歩き続けてきたのであろう。
「立ち話もなんだから、中に入ろうか。外も暗くなってきたことだし」
少女は頷き、素直に屋敷の中にはいって行く。
「ごめん、来たばかりで明かりとかわからないんだよ。キミわからないかな?」
少女は、ブツブツいうと手に炎が現れ、部屋中のランプとロウソクの方に飛んで行った。
室内は、一気に明るくなり豪邸の内装品が光で輝いている。
アルトゥールは、少女の方を見ると金髪で長い髪の毛がボサボサになっているおり、そこから尖った耳がでていることに気がつく。
「わたし、洞窟で助けて頂いたエルフです。名は、シェスティンと申します」
かなり若くみえ、豊満な体つきをしており薄く小さな布の服を来ているが体型がわかるほど薄く露出が高い。
「あまりジロジロ見ないでください・・・・・・恥ずかしい・・・・・・」
シェスティンは、赤ら顔をしながら腕で体を隠すが、胸がこぼれおちそうなぐらいはみでて来る。
(あれ、おれの知っているイメージのエルフはガリガリの貧乳のはずなのだが・・・・・・)
「そのぉ、見ての通り私は、エルフで、エルフは着られるものが限られていて・・・・・・お金がなくて・・・・・・着られる服が高くて・・・・・・そのぉ、お礼と言ってはなんですが、ここに置いてくれませんか? 掃除洗濯なんでもしますから、絶対お役に立てます。精霊だって使えるんですから!えっへん・・・・・・お望みならすべてを・・・・・・」
シェスティンは、赤ら顔をしながら涙を浮かべながら、手で顔を覆う
「わたし、何百年も一人ぼっちで行く場所も帰る場所もなく、そのうちゴブリンにつかまって、ずっともてあそばれて・・・・・・」
(そのロリフェイスで数百歳生きてるのか・・・・・・)
アルトゥールは、この豪邸を一人で、一夜だけでも一人で生活できるとは到底思えなかったので、即答でOKをだした。
「わーい、ありがとう!ご主人さま!」
「だれがご主人さまだ!」
「わたし、こういう人間っぽいことやってみたかったのー。エヘッ」
アルトゥールに、抱きつきほっぺとほっぺと合わせてスリスリしていると、安心したのシェスティンがお腹をならしていた。
携帯食料を分け与え、夜は更けて行った。
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