第13話 王都 中


男は、アルトゥールと同じぐらいの年齢で細身の男が言う。


「君がヴァインツィアール名を受け継いだだと? どんな大男の戦士かと思えば、まるで女のようなきゃしゃな体つきではないか」



男は、舐めるような目つきで全身をくまなく見ると 突如、激しく強い口調へとかわり、白い前髪をかきあげながら言う。



「どうして! どうしておまえなのだ! あのヴァインツィアールの名だぞ! 姫様は、どうしてお前みたいな、下民で下賤で名もなきゴミムシが英雄の名を与えられるのだ! 俺は絶対に認めない。 お前の化けの皮を絶対に剥いでやるからな!」


凄まじい形相になり口からは涎が垂れらしながら男は、アルトゥールの首を締め始めた。


 シュティーナは、貴族同士の話に自分の身分では、口を挟める立場ではないことを理解し唇を噛み締めて見ているしか出来ない。


 「おまえは、不幸を呼ぶ男だ! お前に関わったやつは、みんな不幸になるぞ! あの猫耳共もどうなるかな!」


 アルトゥールの表情が変わり、シュティーナもそれに気がついた。


 アルトゥールは、男の手首を掴むと服の上から分かるぐらいスーツの筋肉が隆起していき、手首から悲鳴の音が聞こえて来る。


 「うわぁぁ、やめろ、いだぎぃぃぃ」


 悲痛な声を上げて手を放して体が無重力になったかと思うと、アルトは、大きく投げ飛ばした。

激しい音と共に男は、転倒し顔から涙と鼻水と涎がたれていた。


 「おれや、おれの知り合いに手を出してみろ。こんなものではすまないぞ」

静かだが、怒りに満ち溢れた声であった。


 「おのれれぇ!絶対にゆるさんからなぁぁ」

恐怖な顔で腕を抑えて走り出して行く。



 「彼は、カーマイン フォン フェリードだ。名門大貴族だ。私が言うのも何だが、自尊心が強く、人を蹴落とすのが得意とするやからだ。ちょっと前までは、いい貴族でああではなかったのだが。あのようなもの言いをするってことは気をつけておいたほうがいいよ」



 シュティーナと共に冒険者ギルドに向かった。



 冒険者ギルドに向かう途中、町並みを紹介された。


 (やっぱり中世って感じだなぁ。剣と魔法のファンタジー世界特有のあれだなぁ。人間とは違った種族も多いが、女性の割合が多いな。話では、若い男はほとんど前線に駆り出されているらしいが、人種以外は、だいたい世界観は理解できる感じか)



アルトゥールは、ウィンドウのマップを開きチェックポイントをつけて行く。

そして、巨大な建物にたどり着き、王国一番のギルドとシュティーナが教えてくれた。


 ウェスタン扉を活きよいよく開くと、酒場のような光景が目に広がり人が溢れて音楽が流れ、無数の種族が存在していた。


 (よくあるゲームの光景だなぁ。ここでクエストを受注するのか)




 「貴族様がめずらしい。また、冒険者ごっこのために人集めか?」

「おい、服装から貴族様らしいが知らねー顔だな」

 「だれか、あいつのこと知ってるか?」


 酒場にいる大男たちが話し合っている。


 アルトゥールが、奥へ進もうとすると一人の男が足を引っかけようとドンと分かるように大胆に伸ばした。


 「おい、また、あいつやっているぜ。いつもの新人イビリかよ。貴族様でもおかまいなしだな」


 酒の肴にと言わんばかりに、笑い声がひしめき合う。


 (やれやれ、どこぞのテンプレだよ。勘弁してくれよ、こういうのは)


 シュティーナにも、男が近寄り後ろから羽交い締めにする。


 「いい体してんなぁ、最高の体だぞ。程よく引き締まってて柔らかいところはやわらかい。なー、あんな男より、おれと今晩、楽しもうぜ。へっへっへ、こっちの具合はどうかな?」


 「あっ、ちょっと、やめ・・・・・・あっ、そこは・・・・・・」



 アルトゥールは、表情も変えずマッスルスーツが筋肉を隆起させると、思いっきり足めがけて踏み込んだ。


 足は、小枝を踏むかのように簡単に折れ、そのまま床をぶち抜いた。


 (あっ 力いれすぎた!)

 

 男は、足を抑えながらのたうち回る。


 「すまん。すまん。キミの長い足につまずいてしまった。これは治療費だ受け取れよ」


 金貨を顔に投げつけた。

酒場は一瞬、静寂が訪れ男の悲鳴だけが響き渡る。


 アルトゥールは、シュティーナに抱きついている男の顔を一撃いれて手が緩んだところで、シュティーナが思いっきり股間にケリを入れると、男はそのまま股間を押さえ倒れ伸びていた。


 「野郎!舐めたことしやがって、貴族様でも容赦しねーぞ!」

 「やめてください! 店での乱闘はご法度ですよ! 衛兵を呼びますよ!」


 店主は、困った顔で慌てふためくと、店内もざわつき始めた。


 アルトゥール、酒場全員に聞こえるように、言い放つ

 

 「聞け!おれは、アルトゥール・フォン・ヴァインツィアールだ! この名を知らぬものはないだろう! この名を聞いても歯向かうやつは、それ相応の覚悟で挑んでこい!」


 酒場は静寂に包まれ、凍りつく。

 長く感じる数秒の間が終わると、酒場はざわめき始めた。


 「ヴァインツィアールだってよ。あの名前を勝手に名乗ったら、打首じゃすまねーぞ」


 「いや見ろよ、あの紋章。剣をもった天使に龍が絡むように守っている。王宮でしか発行されないヴァインツィアール家の紋章のプレートをつけている」


 酒場は、どよめきたった。


 (たしかに、名前の効果は絶大のようだな。ちょっとはずかしかったけど、試した価値はあったな)


 「はぁ? バインツなんだかパンツか、しらねーが、仲間をよくもやってくれたな!」


 大男のトカゲのような格好の男が、木の椅子を持ち上げ振り下ろしてきた。

アルトゥールは、スーツの筋肉を隆起させると一撃で椅子を粉砕し、トカゲ男の顔を殴りつけた。

 トカゲ男は、空中を一回転すると床に倒れ込んだ。



仲間が駆け寄ってきて


 「おれたちは、もうなにもしねぇ、金もいらねぇ、ちょっと悪ふざけがすぎた。すまなかった。見逃してくれ」

 

数人の男が倒れている仲間を担ぎ上げ連れ出して行った。


「ありがと・・・・・・」


シュティーナは、顔を赤らめながらお礼をのべる。




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