王都イェルハルド

第12話 王都 上


 窓からカーテンがなびき、そよ風と光が差し込むと少年ことアルトゥールはベッドの上で王都について幾日目かの朝を迎えた。

ベッドも部屋の装飾も見るからに高級そうなので溢れている

アルトゥールは、考えていた。


 (もしかしたら、この世界でおれはめっちゃ強いのではないか? ここの一般兵はゴブリンでさえ苦戦していた。ゴブリンは拳銃で一撃も可能だし、スーツを着ていれば素手でも倒せそうだ。なら上位モンスターだって数発打ち込めばいけるだろ。 それに、この国で随一の魔法使いであのレベル。ライフルより威力はなさそうだし大型の魔法もなさそうだ)

 

 ケロベロスは、ローバッテリー状態となり部屋の片隅で丸くなっていた。


 (補給をしておきたいところだが、まだ、敵か味方かどうなるかわからない国で手の内を晒したくないが、拳銃の弾数も少ない。どこかタイミングはないだろうか)


 ウィンドウを眺め、スキャンした城の見取り図と人の配置を確認していると人の動きをしめす光点が近づいてきた。


 ドアの方からノックの音が聞こる。


 「本日から、身の回りの世話をさせていただく近衛隊長のシュティーナよ。よろしく。本来ならこういう事はしないのですが・・・・・・記憶をなくされているそうで・・・・・・なにか、わからないことは何でも言ってくださいね」


 そこには、近衛隊長の勇ましい姿からかけ離れた、同じような服装でスカートが短く露出の高い服装で腰には剣をぶら下げているシュティーナの姿があった。


 (まぁ、監視役ってとこかなぁ。なにかあったら切られる事も考慮しておかないとな)


 「国王がお呼びです。すぐに用意してください。準備が出来たら廊下でおまちしておりますのでお声がけを」


 「エステル・・・・・・いや猫耳の人たちはどうなっている?」

 「今、皆様は治療して元気になってきてしたよ。大丈夫心配しないで」


 アルトゥールが安心な顔をした表情をみると扉から出て行った。


 「さて、着替えるか!」


 何かあってもいいようにマッスルスーツを着込み、その上からこの世界の貴族服の正装なのだろうが、軍服と学生服に白に青ラインがはいっ感じの服に着替えて鏡で自分の姿をみると、コスプレしているようで恥ずかしくなって来る。


 シュティーナとともに王の間へ急ぐ、そこは広い空間になっており、幾多の衛兵が整列して待ち受けていた。


上階からは、貴族らしきものが見下ろし、兵士は女性が多いが貴族に関しては、男性も結構な数がいるようだ。


 階段状になっている上には国王が座っており、こちらを見下ろしていた。


 国王は、すでに高齢になっており、皮膚は、干上がり髪は綺麗な白髪をのばしている。

宝石類を身にまとっているが、王様にしてはやや質素にも見えなくない。

隣に、ソフィアが笑顔でやや顔を赤らめて座っていた。


 「此度は、我が娘を救っていただき感謝する。貴殿の働きには感服した。褒美をとらす。金貨を与えてやろう。そして、娘がどうしもと言うのでアルトゥール・ヴァインツィアールの家名を継ぐことを許してやる。今後は、アルトゥール・ヴァインツィアールと名乗るがいい」


 周囲の兵からは、驚きの声が漏れる。


 「アルトゥール・ヴァインツィアールか。良い名だ! 王さん、ありがとうな」


 少年は、笑顔で返答すると、すぐさま形相変えた。


 「で、それだけか?」

 「は?」

 「それだけかと聞いている」


 アルトゥールは、腕を組んで国王に言う。

 

 「なんじゃ、不満か?」

 「国王の御前だぞ! 分をわきまえろ! 不敬は許さんぞ」

  兵士たちが槍を構え取り囲み始めるが、国王が軽く手を上げ制止する。


 「おれは、王女を救い兵士もすべて救った。その対価がそれだけか」

 

 無論アルトゥールには、対価や価値などわかるはずはない。ただ、自分の現在の価値を調べるために言っているのである。


 (王様は、洞窟の話を聞いているだろう。いろいろな未知の魔法の話を聞いているだろう。それで、安く買い叩こうとしているのか、どれぐらいおれに価値があるのかがわかる)

 

 国王が睨みつける。


 「ほほほ、威勢がいいな。良かろう。屋敷と領地、それと爵位をくれてやる。これで十分すぎるだろ。予は、疲れた。もう下がって良いぞ」


 国王は、席を立ちそそくさと退出して行った。


 アルトゥールとシュティーナが退出する。


 (あー、怖かったー、ちょっとやりすぎたかな。だが、評価はかなり大だな。国王にタメ口聞いてもいけるってことか、まぁ、命が減りそうだが。国王も下手に未知の魔法を使うやつには手を出せないってところか)


 「肝を冷やしたぞ。まさか、国王陛下に口答えするとはな」


 シュティーナが冷や汗を拭いながらつづける。


「しかし、すごいことだよ。あのヴァインツィアール家の名を正式につげるなんて! 英雄の中の英雄。伝説のドラゴンだって倒したという話もある。この国で知らない人はいない、それぐらいすごい名家だよ」

 

 「へー、そんなすごい名前なのか。おれなんかが貰っちゃっていいわけ?」

  「通常ありえません! あの名前は・・・・・・」



「おにいちゃん!!!」


 声を遮るようにエステルが駆け寄ってきた。


 「エステル!」

  エステルは力いっぱいに、大きい胸を押し当てながら抱きついた。


 「元気になったのだな!よかった」

 「お姉ちゃんも他の人も元気に回復したよ!それでね。今日はお別れに来たの」

 姉とお礼と別れの話、そして、町の再建をする話をした。


 姉の手をひっぱりエステルが離れて行くと、こちらに振り向き口に手を添えると力いっぱいの大声で、


 「おにいちゃん、大きくなったら結婚しようねっ!」


 そして、大きく手をふると姉の手をひっぱって行ってしまった。


 (お別れかぁ、最後まで語尾に、にゃーってつけなかったなぁ。ちょっと期待を裏切られたなぁ)


 アルトゥールは、苦笑しながらも最初に助けてくれた大恩人との別れに悲しみを抱いていた。




 「あら、勇者様は、モテモテですわね」


 少し離れたところから、ヤキモチっぽく笑みをこぼすしソフィアが近づいて来る。


 「アルトゥール・フォン・ヴァインツィアールのお名前は、馴染みましたか? アルトゥール・・・・・・アルト、そうこれからは、アルトとお呼びしますわ。シュティーナもそう呼ぶと良いわ」


 ソフィアは、ティアラを冠り正装のドレスを身に着けており、相変わらず露出度が高いドレスで胸の谷間には宝石が輝き、その美しさはましていた。


 「アルト、後で、あなたのお屋敷をご案内させますわね。

少し時間が空きますから、一度、冒険者ギルドに向かわれるとよいですよ。あそこなら酒場も兼ねて情報が集まってきます」


 「冒険者ギルドか、この世界にはギルドがあるのか」


 (そうだなぁ、この世界の情報もほしいし旅をしていれば、なにか分かって行くかもしれない)



「なにかアルトにまつわる話とか聞ければいいのですが、わたくしは、すこし公務が残っていますので、シュティーナ後はよろしくね」


 「はい、ソフィア様。後のことは頼まれました」


 お互い笑顔で挨拶すると、ソフィアは足早に歩いて行った。


 「では、いきましょうか、ヴァインツィアールト殿。その私は、貴族ではないのでアルト殿でよろしいですか?」

 「あー、全然気にしなくてもいいよ。むしろ殿も取ってくれたほうがいいけどね」


 王宮から出るために、人気がない廊下に差差し掛かると通路の曲がり角から男の姿が現れた。






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