第10話 洞窟 その6


 洞窟の外から光の差し込んでいるのが見える。

捉えられた猫耳の少女たちには、希望の光とさえ見えたであろう。

疲れ果て足は擦り傷だらけで歩くこともままならないが、光に吸い寄せられるように歩む速度が早くなって行く。


 もう少しで外に辿り着こうと少女たちは希望を掴むかのように腕を伸ばし体が引っ張られるように歩いていると、その光は無数の影に覆い隠された。

少女たちの足が立ち止まり恐怖の顔へと変わって行く。


「シュティーナ近衛隊長・・・・・・」


 静まる洞窟内で赤毛のルイースがつぶやいた言葉は影の人物に届き、


「ルイース! いるの!?」


 美しい声が暗闇に閉ざされた洞窟内に響き渡る。

 

「シュティーナ隊長・・・・・・姫様が、姫様が・・・・・・」

 

ケロベロスから降りると、半裸状態で目に涙を浮かべながらシュティーナの前で片膝を付く。

シュティーナたちは、ケロベロスに気がつくと剣を抜き取り囲み近づいて行く。


「お待ち下さい。この召喚獣は味方です。どうか剣を収めてください。」


  これまでの経緯を簡単に説明し、姫様が洞窟奥で戦っていることを目に涙をうかべながら伝えた。


「ねぇ、きみ、この人達を姫様の元に案内してくれないか?」


 ルイースが召喚獣ケロベロスに懇願するとライトがチカチカし洞窟奥へと向かい始めた。


「ルイースたちは外で待機、2名を残して後は私についてきて!」


 洞窟奥へと駆け足で向かって行った。

ケロベロスは、なにかを察知したのか速度をまして走り出して行く。

 

「おい! ちょっと待ってくれ! そんな速度で走れないぞ」


 ケロベロスは、だんだん小さくなり洞窟の奥で見えなくなった。

 シュティーナたちは、道先案内人を失い急ぎたいのは山々だが道が分からずに、周囲を警戒しつつの移動となってしまった。


 しばらくすると、奥から激しい音と共に少年の声が聞こえて来る。


「逃げろおおおおおおぉぉっっぉっっぉぉ!!」


 シュティーナは、少年とその前に抱きかかえられ顔を真赤にしているソフィアが視界に止まった。


「ソフィア様?」

「シュティーナ?」


 見られたことがわかると、さらにソフィアの顔が赤くなり少年の胸に隠れるようにうずめた。


 後ろにゴブリンの群れが見えるとソフィアたちも少年の後ろについて全力で走り始めた。

長く続いた道の先に光がみえ辛くも洞窟全員出たのを確認が出来た。


「ケロベロス! 洞窟に射撃して、入り口を塞げっ!」


ケロベロスに最後の弾丸をありったけ撃ち込んで洞窟の入り口を崩し塞がせた。


「ふぅ、何とか逃げ切れたかぁ。あっぶなかった」


 後ろにぶら下がっていたパウラが手をはなして降りる。

そして、少年はソフィアを降ろすと、ソフィアは少年に腕を回したままだった。


「もう少しこのままで・・・・・・」


目をうるませて訴えかける。


「なにやっているのですか! ソフィア様! この少年はなんですか! お前は誰だ!」


「姫様、ご無事でよかった。姫様に何かあったら~」


 赤毛のルイースは、安堵とうれしさで泣き崩れた。


「今は、話している時じゃないですわ! ここから早く離れましょう! この大人数を移動させないといけませんわ!」


 ソフィアは、顔を引き締め馬車の方に向かって行く。

メイスを大きく持ち上げると、馬車の荷台に激しく叩き始めた。


「姫様!なにを・・・・・・。その馬車がどれぐらいの価値があるのか分かっているのですか!! 小国が買えるぐらいの代物ですよ!」

「なーに、民の命に比べたら、安いものですわ」

 

手を止めることなく、渾身の力で振り下ろす都度、馬車は形を変えて壊されて装飾品が吹っ飛んで行く。


 少年は冷や汗をかきながら、魔法で強化しているのかマッスルスーツを着ている自分ぐらいの力が出ているではと思うほどで、怒らせることはしないと決めたのだった。


 馬車の荷台の上の部分はなくなり、内装のソファーなども剥がすと十分の乗れるスペースが現れた。

 ソフィアは、内装のソファーやカーテンを破るとみんなに配り、簡易の服として身につけてもらった。


 馬車の準備ができ全員乗り込み終えると、少年が配置していた振動感知装置から警告がならされ無数の光点が接近して来ると少年は周囲に警戒をするように伝える。

 兵士の一人が大声で叫んだ。


「うあわぁぁ! ゴブリンの群れがでてきぞぉ!」


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