第9話 洞窟 その5
ルイースは、安堵したのか座り込むと動けない様子なのでケロゲロスの上に乗せた。
「これは一体何なのだ!」
「あー、えー、召喚獣、そうそう召喚獣だよ」
「なんだと、召喚獣なんて召喚できる人物なんて・・・・・・」
言い終わるより先にケロベロスが先導して歩き出した。
少年がウィンドウでゴブリンをイメージすると、目標敵対勢力だと認識したようだった。
少年は、ゴーグルを着用して残弾を確認した後、ケロべロスから地形データを受け取り、小型のドローンを先行させて情報収集させていた。
光点が集まっているとこを確認し走り出すと、その速度は尋常ではなく一歩一歩が激しく地面に叩きつけられ、スーツからは筋肉が隆起しているように見え、さらに疾走して行った。
細い道を走り続けると奥から明かりが見えて来ると、少年は光めがけて更に速度をあげ走り出す。
周囲の地形データから、広い空間があることも生物の配置も理解していた。
そのまま突き進むと広い空間に入り勢いよく人間とは思えないほどの大きく跳躍してのけソフィアが片膝をついて崩れている前に地面を砂埃をあげながら着地した。
「君がお姫様? 助けに来たよ。赤毛の人から頼まれて来た」
ゴーグルをずらし助けに来たことを伝えると少女は驚きの表情で見つけていた。
ソフィアは、息を切らし汗だくになり鎧はほとんど破壊され無くなって、メイスからは肉片と血がこびりついて周りのゴブリンの死体の数からどれだけ戦い続けたのかが伺えた。
ほかの兵士たちは片膝をついてパウラが魔法で治療しているようだ。
「なんだー! おまえ! どこから出てきやがった! オスとは話す気にならん。おまえらやってしまえ」
言い終えると、ゴブリンたちが一斉に少年めがけて襲いかかる。
少年はソフィアを強く抱きかかえると後方にジャンプし、ディスプレイにはすべてのゴブリンの位置が表示されており、ライフルを片手で構えて次々とゴブリンたちを激しい銃撃音を轟かせながら次々と蜂の巣になって行く。
(やっぱり、これゲームかなぁ 無数の巨大アリとか倒すゲームあったな)
などと戦闘中にも関わらず考えていた。
少年はゲーム感覚でヘッドショットを狙って引き金を引き続ける。
途中、普通に撃つのは飽きてきたので地面にころがって決め目ポーズをきめたり後ろ向きに脇の下から撃ったりと、なんとなく映画でやっていた動き思い出し楽しみながら撃ち続けた。
その間、オークもソフィアも呆然として見ているしかなかった。
ゴブリンの死体の山が出来上がり、あたり一面に魂の抜け殻となった肉の塊が散乱していた。
「大方片付いたかな。さて、そっちのでかいのはどうする?」
オークを睨みつけると言い放った。
ライフルをオークに向けると、すぐさまオークが巨大なオノを振り下ろして来た。
そのオノは鉄板を何枚も張り合わせた太さと大きさを誇っていた。
少年は巨大なオノに狙いをつけるとトリガーを引き弾丸が連続して飛び出した。
ライフルの乱射には耐えきれることもなく粉々になり虚しくも短い棒になってまった。
オークは、後ろにたじろぎ冷や汗を滝のように流れ出し驚愕の表情を作ってる。
「今、なにをした・・・・・・」
その瞬間、広い空間の上の方から、弓矢が降り注いで来る。
少年は、上にもいることは知っていたが、てっきり降りて来るものだと思いこんでいた。
飛んで来る矢の頭部に命中しそうなのを中心にライフルで撃ち落としていき体には、何本も命中しているが、スーツに貫通することもなく矢が折れて落ちて行く。
上階にいるゴブリンまでは、跳躍しても届かない高さだった。
ライフルの残弾も残りも少なくなり無駄に撃てない状態だ。
オークが近くにあった巨大な岩石を持ち上げるとこちらに向けて投げようとした瞬間、激しい音と共に弓矢を放っていたゴブリンたちがボロ雑巾のようになって地面に倒れ込んで行く。
激しい音の方を見るとケロベロスが踏ん張りながらガトリング砲で一掃してくれていた。
洞窟の措置には振動探知装置をおいてきたようで、周囲に敵兵力がなく戻ってきたようだ。
「さ~て、おたくの子分は全部いなくなったがどーするのかなぁ~?」
「ちょ、ちょっとまて! おれに何かあったらどうなるかわかっているだろうな! おれは帝国でその名を轟かせたグンター様だぞ! もし俺からの連絡が途絶えたら帝国兵1000万がいつでも攻撃できるように準備しているぞ!」
オークは、汗を滝のように流しながら喋っている。
(あっ こいつアフォだ・・・・・・)
「いいか、教えてやろう。この洞窟はこの先どこに繋がっているのか知っているか? 魔王領に繋がっている。 なぜだかわかるかぁ? 大規模侵攻作戦がまもなく始まるからだよ! ブヒヒ」
「そんなぁ・・・・・・」
ソフィアは周囲のゴブリンに正規の鎧を着ているものが混ざっていることに気が付き口元を押さえ顔が青ざめて行く。
「隊長~、なにやってんすか~。もうメシの時間でですぜぇ」
奥から、黒い鎧を身にまとったゴブリンが出て来た。
「なんだなんだ。これはどうなっているだ。ひっで~な」
「敵襲だ! 笛を吹け! 銅鑼をたたけ! あいつらを逃がすな!」
けたたましく笛の音が洞窟に鳴り響くと、奥から大量の黒い鎧を身にまとったゴブリンたちが咆哮あげながら出て来た。
それは、広い空間を埋め尽くそうな数が次から次へとでて来る。
ケロベロスに応戦させるように指示した後、ソフィアに寄って行った。
「大丈夫かい? 動ける?」
「足を挫いたようです。動けません。わたくしはいいので他のものを連れて・・・・・・」
言い終わるより早く少年はソフィアを前に抱きかかえると、ソフィアは、顔を真っ赤にして吐息が漏れると首に軽く腕を回した。
「目を閉じて!」
「えっ、はい!」
少年は、フラッシュグレネードを投げ入れると薄暗い洞窟内が眩しすぎるぐらいの閃光が包み込んだ。
「ケロベロス! 天井を撃て! しばらくの足止めにはなる!」
ケロベロスは残り残弾の少ない中、天井を撃ち抜いて行くと厚い岩盤が崩れ、大量の岩盤と土砂がゴブリンたちの真下に落ちていき砂煙で見えなくなった。
兵士たちをケロベロスに乗せ。ソフィアを抱きかかえて小柄なパウラを背中におぶると入り口に向けて走り始めた。
洞窟の外から光の差し込んでいるのが見える。
捉えられた猫耳の少女たちには、希望の光とさえ見えたであろう。
疲れ果て足は擦り傷だらけで歩くこともままならないが、光に吸い寄せられるように歩む速度が早くなって行く。
もう少しで外に辿り着こうと少女たちは希望を掴むかのように腕を伸ばし体が引っ張られるように歩いていると、その光は無数の影に覆い隠された。
少女たちの足が立ち止まり恐怖の顔へと変わって行く。
「シュティーナ近衛隊長・・・・・・」
静まる洞窟内で赤毛のルイースがつぶやいた言葉は影の人物に届き、
「ルイース! いるの!?」
美しい声が暗闇に閉ざされた洞窟内に響き渡る。
「シュティーナ隊長・・・・・・姫様が、姫様が・・・・・・」
ケロベロスから降りると、半裸状態で目に涙を浮かべながらシュティーナの前で片膝を付く。
シュティーナたちは、ケロベロスに気がつくと剣を抜き取り囲み近づいて行く。
「お待ち下さい。この召喚獣は味方です。どうか剣を収めてください。」
これまでの経緯を簡単に説明し、姫様が洞窟奥で戦っていることを目に涙をうかべながら伝えた。
「ねぇ、きみ、この人達を姫様の元に案内してくれないか?」
ルイースが召喚獣ケロベロスに懇願するとライトがチカチカし洞窟奥へと向かい始めた。
「ルイースたちは外で待機、2名を残して後は私についてきて!」
洞窟奥へと駆け足で向かって行った。
ケロベロスは、なにかを察知したのか速度をまして走り出して行く。
「おい! ちょっと待ってくれ! そんな速度で走れないぞ」
ケロベロスは、だんだん小さくなり洞窟の奥で見えなくなった。
シュティーナたちは、道先案内人を失い急ぎたいのは山々だが道が分からずに、周囲を警戒しつつの移動となってしまった。
しばらくすると、奥から激しい音と共に少年の声が聞こえて来る。
「逃げろおおおおおおぉぉっっぉっっぉぉ!!」
シュティーナは、少年とその前に抱きかかえられ顔を真赤にしているソフィアが視界に止まった。
「ソフィア様?」
「シュティーナ?」
見られたことがわかると、さらにソフィアの顔が赤くなり少年の胸に隠れるようにうずめた。
後ろにゴブリンの群れが見えるとソフィアたちも少年の後ろについて全力で走り始めた。
長く続いた道の先に光がみえ辛くも洞窟全員出たのを確認が出来た。
「ケロベロス! 洞窟に射撃して、入り口を塞げっ!」
ケロベロスに最後の弾丸をありったけ撃ち込んで洞窟の入り口を崩し塞がせた。
「ふぅ、何とか逃げ切れたかぁ。あっぶなかった」
後ろにぶら下がっていたパウラが手をはなして降りる。
そして、少年はソフィアを降ろすと、ソフィアは少年に腕を回したままだった。
「もう少しこのままで・・・・・・」
目をうるませて訴えかける。
「なにやっているのですか! ソフィア様! この少年はなんですか! お前は誰だ!」
「姫様、ご無事でよかった。姫様に何かあったら~」
赤毛のルイースは、安堵とうれしさで泣き崩れた。
「今は、話している時じゃないですわ! ここから早く離れましょう! この大人数を移動させないといけませんわ!」
ソフィアは、顔を引き締め馬車の方に向かって行く。
メイスを大きく持ち上げると、馬車の荷台に激しく叩き始めた。
「姫様!なにを・・・・・・。その馬車がどれぐらいの価値があるのか分かっているのですか!! 小国が買えるぐらいの代物ですよ!」
「なーに、民の命に比べたら、安いものですわ」
手を止めることなく、渾身の力で振り下ろす都度、馬車は形を変えて壊されて装飾品が吹っ飛んで行く。
少年は冷や汗をかきながら、魔法で強化しているのかマッスルスーツを着ている自分ぐらいの力が出ているではと思うほどで、怒らせることはしないと決めたのだった。
馬車の荷台の上の部分はなくなり、内装のソファーなども剥がすと十分の乗れるスペースが現れた。
ソフィアは、内装のソファーやカーテンを破るとみんなに配り、簡易の服として身につけてもらった。
馬車の準備ができ全員乗り込み終えると、少年が配置していた振動感知装置から警告がならされ無数の光点が接近して来ると少年は周囲に警戒をするように伝える。
兵士の一人が大声で叫んだ。
「うあわぁぁ! ゴブリンの群れがでてきぞぉ!」
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