第8話 洞窟 その4



 少年は、豪華そうな馬車から降りる集団を岩陰から身を隠しながら見ていた。


「趣味の悪い馬車に乗ってるなぁ。あれは敵なのか? エステルはなにか知ってる?」

「エステルぜんぜんわかんぁーい」

「今からあの洞窟に入るけど、絶対にケロベロスから離れたらだめだからね」

「このケロちゃんが守ってくれるの?」

 

エステルがケロベロスをなぜるとケロベロスがすり寄って来る。

 

「ケロちゃん大好き」


 ケロベロスに抱き着くと、エステルはしっぽを左右に激しく振って喜びを表現していた。


「ケロはエステルを絶対に守ること! いいね」


 ケロベロスは、体を上下にゆすり了解したようだ。

 洞窟に入ると中は真っ暗でなにも見えない。


「暗くて怖いよぉ・・・・・・」


 ケロベロスが簡易ライトをつけると少し奥の方まで見え始めた。


 ウィンドウのマップを開くとケロベロスから観測された周囲の地形データが送られて、洞窟内の3Dモデリングが出来上がって行く。

生体反応をキャッチし、一部の光点の集団がこちらに向かいつつ、それを追うかのように大量の光点後ろから迫ってきており、さらに奥の方には大量の光点が検出され戦っているかのような動きを見せている。


「さてと、行きますか」


 ゴーグルを装着すると暗視カメラになっているのか周りの様子が見え始める。

 ライフルM4 5.56mには大型のカメラがいくつかついており正面に向けるとゴーグルと連動して照準を合わせることができた。


 (匂いを何とかできる装備はないのかなぁ。鼻がもげそうだ)


 周囲に生命反応がないのを確認すると、少年は緊張感もなく普通に歩いていた。

レーダーに、生命反応が青く輝きこちらに接近して来るのがうかがえ、少年は、ツバを飲み込むとライフルのセーフティを外しライフルを構えた。

 

「ゴブリンだ!」


 数匹のゴブリンがこちらに襲いかかろうとした瞬間、乾いた音が連続して鳴ったと思うとゴブリンたちは蜂の巣となって地面で倒れ込む。

エステルは、耳を塞いでポカーンと顔で見ている。


(この武器でも全然大丈夫そうだな。いける!)


 少年は、生唾を飲み込み確信したような表情を浮かべ足取りも軽く奥へ進んで行く。

暗く湿ってぬかるみを帯びてる洞窟をしばらく進んで行くと奥の暗闇からは、激しい金属のぶつかる音や悲鳴が飛び交っているのが聞こえて来た。


 少年は、歩く速度をあげ音と生命反応があるほうに小走りで行くと、そこには数匹のゴブリンに取り押さえられ、鎧はほとんどなくなり服は引きちぎられ白く引き締まった体につかわしくない胸があらわになり、乱暴に揉まれ味見をするかのようになめられている


猫耳の娘たちは、怯えて座り込み頭を押さえて恐怖の表情を浮かべている。

赤毛のルイースは、激しく抵抗するが小柄なゴブリン数匹ですら疲弊しきっている体に力は入らず大声で罵倒を浴びせるのがやっとで視線の先に更に影が近づいて来るのが見えた。


 影は近づくと腕を伸ばし乾いた音が激しく響き渡り、音に合わせて周囲は火花で照らされる。

ルイースが、照らされる明かりでよく見るとゴブリンではなく人の姿をしていた。

更に数回乾いた音が響き渡り、薬莢やっきょうが音を立てて落ちて行く。


「だいじょうぶ? じゃないよね。ちょっと待って後ろも片付けて来るから」


 後列の方で金属のぶつかり合う音が響き渡り、少年は素早く後方に走り出し兵士に立ち向かって来るゴブリンたちを拳銃デザートイーグルでを撃ち殺して行く。

兵士たちは驚いた顔をみせ、少年はおかまいもなくゴブリンの群れの間に立ち塞がると、洞窟の奥から寄せるゴブリンにライフルM4 5.56mを連射して撃ち放って行った。


 洞窟内に射撃音が響き渡り銃口から激しく煙が飛び出し火花マズルフラッシュが光るとゴブリンの群れを次々倒して行く。

数が多く何度かマガジンを交換し残弾が少なくなってきた頃に、ようやく後方からついて来る集団の生命反応が消えた。


(こんなにゴブリンって数がいるのか。どっかのゲーム並に撃ちまくる感じだな)


「貴様は誰だ! 何者なのだ!」


 赤毛のルイースが服が破かれ半裸の体を押さえながら近づいて来る。


「いや、誰でもいい! どうか姫様を、姫様が奥に残っているのだ。助けてほしい!」


 今にも泣きそうな表情で訴えて来る。


 少年は、ゴーグルを外すと顔を見せ笑顔で答えると、ウィンドウを開き洞窟の奥に複数の光点を確認する。


(なるほど、ここにいるのか。にしても数が多いな)

 

「姫様を助けてくれたら何でもする。私に出来る事なら何でもするから頼む! 私にとって、姫様は掛け替えのない存在なんだ。」


 ルイースは、懇願すると両手であふれる涙を抑え泣き崩れた。

 少年は、猫耳の娘たちに視線をおくり助けて連れてきてくれたことを理解した。


「大丈夫! 必ず助ける。だからこの子娘たちも必ず助けてやってほしい。おれはこの子たちの助けに来たんだ」

「わかった私が必ずこの人たちの身は守ってみせる。頼んだぞ!姫様は、この奥の・・・・・・」

「場所は、分かっているよ。この奥をまっすぐ突き進んで右斜したに進んだところだろ」


 エステルの方を振り向くと姉を見つけ号泣して目を赤く腫らしながら抱き合っていた。


「エステル、お兄ちゃんは洞窟の奥までいかないとだめなんだ。だからみんなを守って外まで連れ出してほしい。ケロベロスも連れて行かせるから」



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