ゴブリンの巣窟

第5話 洞窟 その1


   一人の女性の兵士が駆け足で城門をくぐり狭間ツィンネのある回廊を走り抜けると居館パラスに入り込んできた。


居館パラスには白く美しい石で囲われた宮廷ホーフがあり中庭には、噴水からきれいな水が光を反射しながら流れ、手入れをされた花壇には色とりどりの花が美しい花を咲かせて宝石箱のような中庭になっていた。


女性の兵士は、激しい足音ともに中世風の甲冑をまとって背中には矢傷を負って出血していた。

 

「大変です! 姫が! 姫様が!」


兵士は、中央でひざまずくと大声で訴えかけて来た。

その声に反応し振り向く女性がいる。年齢は10代後半であろうが気品と上品さが伺えミニスカートからはすらりと長い足が見え軽装の白銀の甲冑を着込み腰には剣を携えて、腰まで届く美しい太陽の光で輝いてみえる髪を大きくなびきながらが振り向くと同時に深く青い瞳が兵士を見つめる。

 

 女性の兵士は一瞬、美しさに見惚れるがすぐに我に返ると報告を続けた。


「大変です! 近衛隊長殿! シュティーナ隊長殿! 姫様がゴブリンに拐われました!」


  シュティーナの隣りにいる深い青色の長い髪を後ろに束ね同じ歳ぐらいの女性が力強く怒りお押し殺したような表情で兵士に問いかける。

 

「なんだとっ!どういうことだ!」

「ホレヴァ領の視察を終えた帰路の途中、村がゴブリンにより襲撃されたとの報告を受け、少数の護衛しかおられませんのでお止めしたのですが、我々にはお止めすることができず、そのまま洞窟へ入って行かれましたっ!」


 シュティーナは、隣にいる青い髪の副官にに振り向いた。

 

「マデリーネ副長、今すぐどれぐらいの兵力を整えられる?」

「おそらく20ぐらい、王宮の兵力も最小人数にしていますし、残りは国境防衛だしていますから」


 ここはヴェステールン王国、小国ながらも豊かな土地を有しており南には海が広がり気候も恵まれ水資源も豊富である。


近隣にに隣接国からは、常に領土を狙われ交戦状態であるが国境沿いには渓谷が立ち塞ぎ守りやすくパルテルス鎮守府、ヴィクルンド鎮守府、ブルムクヴィスト鎮守府が難攻不落の要塞として他国から数百年つづく王国を守り続けている。常に戦いの日々で男性が少なく女性の戦力を投入している。


「パルテルス鎮守府が一番近く伝令を飛ばして援軍を呼びましょうか? 3日ぐらいはかかるでしょうが……」

「魔王軍との激戦中で戦力を裂けないだろう。近衛兵の大部分も援軍として投入している今となっては、それに兵力より時間のほうが大切だ」


 伝令の兵士が倒れ衛兵が駆け寄ってきて支えていた。。


「ありがとう。 もう下がっていいわ。 医務室につれていき治療してもらって」


 まるで音楽を奏でるような声でシュティーナが兵士の慰労を伝えると、感動しつつも崩れ落ち衛兵に抱きかかえられたまま連れて行かれる。


「司令を伝える! 特選5人と早馬を用意し私と共に姫様の救出に急行する。残りは副長と共に準備、武装を整え姫様の救出に向かうぞ!」


 周りにいた兵士たちが激しく同時に返事と敬礼をした。


 ぼそっとシュティーナが屈託のない笑顔を見せて、少し嬉しそうだった。


「あの、おてんばお姫めっ」

「なにかいいましたか?」

「いや、なんでもない。 急ごう!」


 シュティーナ達は、宮廷ホーフを駆け足で後にした。


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