第4話 黒い影 下








 エステルもその異様で非日常的な光景に気がついて驚きと慌てた表情を浮かべて口に手を覆った。


「そんちょー! そんちょー!」


 言い終えるより早く飛ぶかのように小走りで村長の家に入って行く。

しばらくもしない間に、エステルの甲高い悲鳴が轟いた。

 少年は駆け足で近寄ろうとすると、ドアが内側から激しく開けられ吹っ飛んだ。

中から先程のゴブリンより大柄で装備品が整って、ヘルメットに角が有り直感的に隊長だと理解で来た。


「いるんだろ! 昼間、仲間をやってくれたやつがぁぁぁ! 出てこいよ!!」


 エステルの細い首根っこ捕まえながら、辺り一帯に怒号が響き渡る。

その声に反応し村人を襲っていたゴブリンたちの一部が集まりだした。

 

「早く出てこいよ! 村の女どもは、すでにおれたちが頂いた! 残りのやつは皆殺しだ! がははは」

 

 エステルの頬は赤く腫れ上がり少年は震えながら、逃げたい衝動にかれていた。

 

(俺に、何が出来るんだ。どうしたらいいんだ。飛び込んでいっても殺されるだけじゃないのか?)

 

「どうした! 出てこないのか! この小娘がどうなってもいいのか!」


言い放つとボロボロになってるエステルの服と下着を乱暴に破り捨て鎧を脱ぎだす。

 

「いいのか~、早く出てこないとこの娘がどうなるかわかるかな~。 くっくっく。もう二度と正気には戻らないぜ」


エステルを乱暴に後ろ向きにして押し倒していた。


「たすけて・・・おにいちゃん」

 

 逃げたい衝動でいっぱいだが、優しく介抱してくれたエステルの笑顔が脳裏に思い浮かんだ。


(しゃーない。ここで死ぬのだったら諦めるかぁ・・・) 


「おい! おれはここにいるぞ!!」

「おまえが仲間をやったやつは! 簡単に死ねるとは思うなよ! おまえは魔法使いらしいな! 変な動きをしたら、この小娘をすぐに殺してやるからな!」

「お兄ちゃん・・・」

 

喉を捕まれか細い声でエステルが目で助けを訴えかける。


「大丈夫だ! 任しておけ! おにいちゃんがすぐにこいつらをぶっ倒してやる」

「はあぁ!? このオレサマをぶっ倒すだと!!」


 隊長ゴブリンが顔真っ赤にして、激昂し血管という血管が裂けそうな勢いだ。


(しかし、どーしたものかなぁ。昼間のあれってどうやんだろ)


 ウィンドウを開くが灰色になっているアイコンばかりである。

昼間使ったはずのレーザーっぽいアイコンはグレーのままで使用がでず一つだけグリーンのアイコン表示となっていてタイマーが短いアイコンが有る。

まるで犬のような絵をしたアイコンだ。

 

(なんだろうこれ ケロ……ベロス?)


 アイコンの横にKerberosと記載されており説明があるが文字化けしており鍵マークが外れてREADYのマークが表示されている。


「えーい、頼んだ!!わんこちゃん!」


 アイコンをクリックすると赤色に代わりハニカム状のものが地形と重なり合い、矢印マークと赤い場所を指定でき目視で落下地点を決められるようだ。

60秒のタイマーがカウント始まる。


 よくわからないまま赤い場所を指定するが、自分と距離を離れている場所にしか設定できず隊長ゴブリンから、やや離れた所にする。


「おそらく赤い範囲が攻撃範囲であろうからエステルに当たらないようにしないと」


 夜空に一瞬きらめいたと思うと流れ星がきれにしっぽが伸びており、こんな時に悠長に眺めている場合ではないが釘付けになる。

流れ星ははっきりと見え、白く、そして、大きく・・・大きく

 タイマーも激しく点滅している。


「うわああ こっちに来るっ!!」


言うよりも早く凄まじい爆音が周囲に轟き凄まじい勢いで砂煙が立ち上っており、ゴブリンたちは腰を抜かしたように地面にお尻をつけている。隊長ゴブリンも同じように。


 周囲に夜の静寂がもどりはじめると、 隊長ゴブリンは地面にしりもちをついた姿勢で目をぱちくりとして言い放つ。


「てめぇ! 何かしやがったのか!」


(そりゃ、こっちが聞きたいのだが、ケロベロスってミサイルとかでゴブリンを一掃出来るようなものじゃなかったのか)


 やや落胆した表情を滲ましている。


 砂煙も落ちつて来ると彗星ではなく流線型でカプセル状のものが地面に突き刺さっていた。


「ゲホゲホ、あぶねーな、なんだよ。こっちが全滅するところじゃねーか!」


 エステルも無事そうでだが隊長ゴブリンのとなりで倒れ込んでいる。


 カプセルのハッチが爆発とともに傘が下向きに開くかのように数枚のハッチが勢いよく開閉すると中からなにかがでて来た。

それは、1.5mぐらいの生物・・・・・・いや、ロボット・・・・・・。

頭や尻尾はなく流線型で長方形、まるで大きめの枕に犬の足と同じ機械的なものがついている。

まくら状の側面にぐるっと黒いラインのようなものが入っていて、うっすらカメラなどが透けて見える。おそらく観測ききなのであろう。


「これがケロベロスなのか?」


 ゆっくりとカプセルからでて来ると、ウィンドウが現れてどうやら指示コマンドが表示のようなものをクリックしてみると画面がロックオン画面に切り替わる。

意識を集中させると、ゴブリンにを標的を固定できた。


 >>READY GO


ケロベロスは、標的をにらめつけるようにするとお腹の下方部分のカバーが外れ黒く長い物体がでて来る・・・それは更に伸びて行く。


(これは、ガトリング砲か?)


 心の中でネットの映像でよく見たやつだ。生唾を思わず飲み込む。


 ケロベロスは、姿勢を低くし踏ん張ると、射撃音が轟き渡り砲身が高速で回転を始め数発撃つごとにケロベロスは踏ん張りながらもガトリング砲の反動で後ろに押されて行く。

 

射撃は、確実にゴブリンに当てていき肉片は飛び散り跡形もなくなるほどである。

隊長ゴブリンは、全身冷や汗だらけとなったが冷静さを取り戻した。



「あの野郎を仕留めろ! 岩場に隠れて包囲しろ! 弓を持っているやつは遠距離からの攻撃だ!」


ゴブリンたちは、ケロベロスにしか眼中になくなったようでゴブリン達は急に統制が取れ始め、身をかがめ岩陰などに見を伏せる。

弓矢をもっているゴブリンは、やや離れ高い場所へと移動して行く。

だが、岩がけに隠れたところで正確なケロベロスの射撃は、岩ごとゴブリンたちを粉砕して行く。

 

 少年の主人公の近くにいたゴブリンも粉微塵となり、その反動で剣が少年のほうに飛んで足元に落ちた。


「これでやるしかない!!」

 

 心に誓い剣を握りしめると隊長ゴブリンのほうに駆け足で向かって行く。

足音はガトリング砲の爆音で消し飛んで聞こえない。

 隊長は下半身まるだしでケロベロスに集中していた。


「よくもエステルを!!」


 少年は隊長ゴブリンのお尻に力いっぱい剣を突き刺すと、表現のしようがない奇声をあげた。

 

「いてー! なにしやがる! おめー、許さねーぞ!」

 

 隊長ゴブリンは顔が赤くなり剣を振り下ろすが大ぶりになり過ぎたため動きが遅くなった。その瞬間を狙って首元に少年の剣が突き刺さる!


「エステルをいじめた分だ!」


 少年は渾身の力をこめて隊長ゴブリンに向かって行く。

剣はのど深くに突き刺さり隊長ゴブリンは、声が声にならなくなり口からは血液まみれの涎がたれ、白目を向いて崩れ落ちた。

それとタイミングを同じとして、ウィンドウにcompleteの文字が表示され、ケロベロスがガトリング砲を格納すると近づいてきた。


「ありがとうなっ!」

 

 ケロベロスを撫ぜてやると、黒いラインの一部が赤くチカチカして喜んでいるようだ。


「おにいいちゃあああん」

 

 エステルが、裸に近い状態で抱きついてきて泣きじゃくっている。相当の恐怖だったんだろう。お兄ちゃんと連呼して泣き止まない。

 優しく頭をなぜて優しく抱きしめて


「もう大丈夫だよ」


 少年は何度も言ってあげた。


 しばらく時間が立つとエステルも落ち着きを取り戻してきた。


「お姉ちゃんたちを助けて・・・・・・」

「そうだ。隊長ゴブリンが言っていた女達は連れて行ったと」


 朝になり、山に逃げていた村人たち村に戻って来た。


「あんた、ありがとう! 村を救ってくれて!」


村人たちは次々と感謝の言葉を少年に投げかけた。

少年は、事の発端が自分にもあると思い、曖昧な返事でその場を凌ぐしかなかった。

村人たちは、老人と子供ばかりで若い男性は殺され少女たちは連れて行かれた事がわかった。

老人が申し訳無さそうに言う。


「わがままなお願いじゃが、娘たちを救ってくれんか。 わしらに出来ることは何でもする。だから、どうか娘たちを・・・・・・」


泣きながら訴えて、ほかの村人たちも詰め寄ってきお願いして来た。

 

 少年は、罪悪感もあり村人たちを安心させてあげたいと思った。

精一杯の引きつった笑顔で答えてみせた。

「だいじょうぶ! まーかせておいてっ」


 胸を張り拳で叩いて見せた。


 村人にゴブリンたちの巣がある場所をだいたい教えてもらうと、ケロベロスと共に村人の服やゴブリンの装備を頂くと村を後にした。








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