第3話 黒い影 中
「うーん、まだ眠いなぁ」
少年は、柔らかい枕の上で寝返りをうつと、やわらかい抱き枕に抱き付いた。
(気持ちいい、やっぱりさっきあった出来事は夢だったのかな?まぁ いいやぁ)
抱き枕に激しく抱きつき夢の中と現実狭間の気持ちいい時間を楽しんでいた。
「いやぁ~ん、やめてくださ~ぃ」
「えっ!?」
ハッとして目を覚ますと、小鳥のさえずり森の中は晴れ渡り木漏れ日からは太陽の光が差し込んいた。
近くに、湖があり鬱蒼と生い茂る木々が生えている。
そして、視線を動かすと少女の顔がこちらを覗き込んで来ている。
どうやら、少女が介抱して膝枕の上で寝ていたようだ……抱き枕と思っていたのは少女の体だった。
非常に柔らかい。
「ねぇねぇ、だいじょうぶですかぁ?」
「あっ、うん」
少年は、状況が理解できず、ぶっきらぼうに答えた。
「ねぇねぇ、怪我とかないですか?」
少女がさらに覗き込んできた。
少女の吐息がかかり、顔に似合わず大きな胸が顔にあたる。
少年は、無理に起き上がろうとした。
「まだ、動かないで、ひどい怪我だったんだからぁ、普通なら死んでてもおかしくないよぉ」
「ありがとう。ここは、どこ?」
「村外れの湖の近くだよぉ。ここまで来たのは初めててで、面白い果実とか取れるから来たんだけどぉ」
よく見ると少女は、10代前半でセミロングの髪型にオレンジ色で、時より八重歯が見え笑顔を絶やさない明るく活動的な感じだ。
裂けた服からは肌が見えていた。
襲われた時より服の面積がかなり際どい所まで切られて無くなっている。
自分の腕を見ると服が包帯のように巻きつけてあり、股間の大切なところも巻いてくれていた。
「ねぇねぇ、あれどうやったのっ! まるで魔法みたい! もしかして、大魔道士様? 魔法使える人なんて始めて見た!」
少女は目を輝かしながら話しかけて来て、大きな胸が顔に当たってくる。
(さっきの生物を倒したあれか、おれもわからない。大魔道士ってことは、魔法がある世界なのか? ここは、現実なのか?)
「さっきの生き物はなんだ? あの緑色の獰猛なやつは」
「えっ、知らないのぉ? ゴブリンだよぉ すっごくおっかなくて肉食でこわいんだよぉ」
(はぁ? ゴブリン? この世界はゴブリンとかいる世界なのか? よくあるVRMMO的な感じかな?)
「お兄ちゃんっていい人だよね? 助けてくれたし。急に全裸で現れたからびっくりしたよ」
「ははは どーかなー。お兄ちゃん悪者かもしれないぞー」
「きゃー やだぁ やめてよー あはは」
「お兄ちゃん、名前は? わたしねぇエステルっていうのぉ!」
(あれ、おれって誰だっけ? 思い出せない、どうしてここにいるんだ?)
困った顔をして悩んでいると、エステルがキョトンとした顔で覗き込んで来る。
「ごめん、なにも思い出せないんだ。記憶がないって言うのか」
「怪我をしたせいかなぁ。そうだ! 村においでよ! 助けてくれた恩人だし怪我も直さないとね!」
少年は、空を見上げると右上にアイコンのようなものに気がいた。
(なんだ、これは、ええっと、どうすんだ)
指を空中で押してもなにもおこらない。右上に意識を集中すると、ウィンドウが開きアイコンが並んでいてアイコンの横に文字のようなものが書かれているが、文字化け状態で殆どのものが読み取れない。
(頭を殴られたときに壊れたのか?)
アイコンをよく見ると、鍵マークとカウントダウンがあるものやぐるぐる回転しているものがある。
(ここはゲームの世界か? おそらく鍵はアンロックかなぁ、カウントダウンは使用可能になるまでの時間か、回っているのはアクセス中か?)
アイコンは、どうクリックするのかわからない。手をアイコンに向けて動かすがすり抜けて空をきるだけである。
(これは、一体どうなってるんだ。)
ウィンドウのあたりを手でいろいろやってみると
「あぁ、ちょっとぉ、だめぇだってぇぇ」
半透明のウィンドウに意識を集中していて気が付かなかったが、右手はずっと少女の柔らかい胸に当たっていた。
面白いのでそのまま揉み続け調子に乗って、おしりのほうに手をのばすとなにか太く長い物の感触があった。
「しっぽ!?」
「ひゃぁぁぁぁ、そこは触らないで~、握られると力がぬけひゃぅ」
エステルがバランスを崩し後ろに倒れると少年は起き上がり少女に近づくと、思い出したかのように頭に猫の耳のようなものがついる事に気がつき、猫の耳のようなものは、丹念にさわり息を吹きかけた。
(うーん、どうやら、本物のようだ。人間以外の生物が普通にいる・・・・・・人間の俺を見ても驚かない。共存している世界か。だが、獰猛に襲う奴らもいるって感じか。まぁ、それは、どの時代でも一緒か)
「ひゃああああぁ!!」
顔を真っ赤にしているが特に抵抗はしていなかった。
エステルの体は、耳としっぽ以外は人間と変わらないようだった。
少女は、頬を真っ赤にし高揚した表情を浮かべながら息を切らせていた。
「お兄ちゃん、こそばいよー」
「これ、本物なの?」
耳に息をさらに吹きかけると、声にならないような声をあげている。
観察のために耳をさわったり中に指をいれたりして本物だと納得した。
エステルは、さらに顔真っ赤にして悶ていた。
「お兄ちゃん……本当に、だめだってぇ もう えっち!」
空は、すでに真っ赤になり日も沈みつつある。
エステルは、すぐ近くと言っていたが、すでに何時間も森の中を歩き続けている。
異型の生物から奪い取った服とマントでサイズが合わなくて何度もつまずきそうになる。
(おいおい、いつまで歩くのだろう。日が暮れて森の中なんていやだぞ)
などと、考えながらウィンドウになにかないか開くと、どうやら、少女にはウィンドウは見えてないようで、少年の視覚か脳内で見えているようだった。
マップアイコンっぽいのがあり、クリックすると更に行くつかのアイコンが表示される。
ナビゲーションぽいアイコンは使えないようだが、簡易マップは使えそうだ。
クリックすると周辺のマップが表示されるが、遠いところはぐるぐる回転するマークがでて来るので読み込めないようだ。
(おっ ちょっと先に村っぽいのがあるな。もう少しか!)
エステルも見慣れた風景に近づき、村に近づくのがわかった。
「はやくぅ もう少しで村だよぉ」
エステルは、少年の手を握りうれしそうに駆け足で村に連れて行こうとする。
(おれは、怪我人だぞ!)
不思議と体の痛みは無くなり腕だけではなく全身の痛みが無くなっていたのだ。
辺りはすっかり暗くなったが、星空が明かりとなって意外に見晴らしがいい。
ようやく森をぬけると開けた場所に小川と小さな木の家が何軒かたっており村としても小規模な感じで牛やアルカパのような生物が飼われている。
だが、様子がおかしかった。
至るところから火の手が上がって村人らしき人たちが慌てふためき逃げ惑っている。
よく見ると、村人たちが次々と倒れて行く。
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