第一章 黒い影

第2話 黒い影 上




 真っ暗で狭い廃墟のような空間だが、所々、壊れた天井からは光が差し込んで外からは小鳥のさえずり聞こえてくるほど、音が吸い取られるようなほど静かで人気が無かった。


「うっ、ゲホッゲホッ」


激しく咳き込む黒い物体、いや、生物であろうか。


(ここは、どこだ…)


黒い生物は、人の形をしており立っているのも辛くなったのか前にめりに倒れ込むと、音を立てて外壁を粉々に壊れ外に出るとともに転げ落ちた。

どうやらカプセル状の入れ物にいれらていたようだ。


 その黒い生き物は、全身火傷のような状態で至るところから白い煙がでている。


「いててて、ここはどこだ」


言葉は、声と発せられているのか声帯がおかしく本人も困惑していた。

黒い生物は、周りがかろうじて見えて来ると、そこは廃墟の建物でいくつもの2mぐらいのカプセルが、並んでおり雨ざらしになり長い年月の間、放置され朽ち果てて廃墟となっていた。 

天井のいたる所が抜け落ちており、快晴の空が気持ちよく見えるほどだ。


 両手をみると、白い煙がもくもくとあがっており激しい火傷痕のようなものが、最初見たときより傷は徐々にではあるが回復して来ている。


「どうなっている。これは・・・・・・傷が治ってる?」

 

 相変わらず答えが得られないまま自問自答を繰り返していると、それをかき消すかのように少女の悲鳴が辺り一帯に響き渡り声が鼓膜を振動させた。




 建物に走り込んで来る少女が目に飛び込んできた。

息を切らし長い距離を走って来ていたのか悲痛な表情を浮かべていた。


少女を追って、人間と言うにはほど遠い身長は低く緑色をした二本足で歩くき、鎧を着た異型の生物が大きな口を開けながら鋭い爪が少女に襲いかかる。


 先行して、追いかけて来る数体が腕を振り回すと、少女のワンピースがまるで紙切れがさけるかのように、鋭い爪が切れ味を見せる。

黒く大きな瞳をうるませて、恐怖で顔を歪ませで悲鳴を上げていた。

 

 激しく息を切らせながら建物に入ったところで、つまずき大きく転倒してしまい先行して追いかけてきた異形の生物が周りを取り囲んで行く。

その大きな口に、大きな牙、大きな舌から唾液が滴り落ちる。

なにやら仲間同士で会話をしているようだが、言語化できないような言葉で理解ができない。


 異形の生物が少女の首を掴み片手で持ち上げると大きな口を開き少女は必死に腕を掴み、足をばたつかせるが無意味な抵抗を見せる。

少女は、首を絞められ頬が紅く高揚しながら悲痛な表情をあげて涎が唇からたれいた。


「やめろぉ!」


 そこには、先程までとちがって綺麗に傷が治ってやや細身だが筋肉質な10代後半ぐらいの少年が立ち塞がる。


 そして、全裸だった。

自分でも驚き困惑する表情を浮かべていた。

本人はまだ隠れて様子を見るつもりであったが体が勝手に動いてしまい一番驚いたのが本人であった。

少年は、すぐに冷静さを取り戻しすこし考えていた。


(おいおい、これはどういう状況だ? おれは・・・・・・ここは・・・・・・今は、そういう事を考えてる場合じゃないな )


少年は、とりわけ異形の生物を見て驚く様子もなくむしろ興味がでてきている感じだ。


 手には近くに落ちていた木の棒を握りしめていた。

額から汗がじわりと滴り落ち、異形の生物が戦闘態勢に入っているのを見ると、後には引けないことを悟る。


「おい! そこの子から離れろ! えー、言葉わかります? ハロー、こんちわー、映画の撮影ですか? 監督さんいます?」


少女を掴んでいた異形の生物は、乱暴に少女を地面に投げ飛ばすとこちらに興味を示し、じりじりと囲み始めた。

少女は、倒れて咳き込みながらじっと声の発する方向を見ていた。


 異形の生物はお互い顔を見合わせこちらに振り向くと、威嚇するかの大声をあげて飛びかかって来た。


「うわっぁ、ちょっと、いきなりなにすんだよ!」


少年は、とっさに棒を握りしめると異形のものに一刀両断に浴びせかけた。

少年の頭の中では確実に仕留めたとおもったが、異形の生物はギリギリでひらりと更に避け襲いかかって来る。


「うわぁぁわっぁ。ちょっとタンマ! タンマ!」


 異形のものの爪が肩や腕をかすめ血が飛び散り、獲物が弱いと判断するとニヤニヤしながら気勢を上げて攻撃を続けて来る。


「ちょっと話し合いを! 言葉わかります??」


だが、少年も身体能力が高く紙一重とは言わないものの致命傷とはならいないがギリギリで避け続けていた。


「当たらないのか。 めちゃくちゃ早い。体が思ったとおりに動かない。てか、なんだこいつら、本物なのか?」



  少年の木の棒を振り回すが空を裂き異形の者には当たらない。

少年は、なにかに気がつくと振り向き後続から追いついてきた2mぐらいの大型の異形な生物が数体後ろから回り込んで来ていた。

巨大な木で出来た混紡を振り下ろされる顔面に直撃し鼻と耳からは血が飛び散り、少年は痛みも感じることもなく意識が遠のいて行く。

 

 すべてがスローモーションのように見え倒れて行く


「あれ・・・・・・なんだ、これ・・・・・・なにもわからないのに死ぬのか・・・・・・」


 その時である、目の前にウィンドウが現れ赤く点滅している。

文字が色々と表示されているが※マークになってバグっているのか読み取れない。

しかし、緊急を知らせる表示とは直感的にわかった。


 その後も、2,3度、多数のウィンドウが表示されて行く。

少年は、突然の事で途切れかけた意識がギリギリで踏みとどまれた。

最後の気力を振り絞って大型の異形のものを睨めると、異形の者の顔に鉤括弧かぎかっこみたいなものがつくと色が変わる。


――LOCK ON。


 括弧かっこの中に、そう表示されると、その瞬間、異形なものの顔がなくなり胸元まで肉片が飛び散り消滅した。

付近の肉からは、蒸気が上がって沸騰しているようである。


 少年も驚きつつも薄れゆく意識の中、他の異形な生物をにらみつけるとLOCK ONと表示され色が変わり、次々と飛び散って行った。


異形な生物は、慌てふためいた。


「なんだ! おまえは!! 魔法使いか! 逃げろおおぉ」


 急に言語が聞き取れるようになっていた。

我先にと悲鳴とも奇声ともつかない声を上げながら逃げ出していき、目の前にでていた警告をだしていたウィンドウも消えて行った。


少女が横たわりながらも半身を起こしてこちらの様子を伺っている。

少女が大丈夫なのを確認すると少年は頭の怪我もあるが安堵感で意識をなくし静かに倒れて行った。




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