19 決着の時へ

「『次なる段階』にまだ先の力があったか……考えてみれば、当然だったな」


 リオネルが微笑む。


「『次なる段階』といえども、神の力には及ばぬ。人が神器の力にて神に至るには、まだ何段階も至る必要があるのだから。だが私も、私の仲間たちも、誰一人としてそこにたどり着いた者はいなかった。よもや貴様のような小僧が……」

「終わりにするぞ、伯爵」


 奴の長口上をさえぎり、冷ややかに告げる俺。


「俺は神になりたいわけじゃない。ただこの力で為したいだけだ。俺の正義を」


 ヴェルザーレを振りかぶる。


「悪を討ち、駆逐し続ける──そんな正義の道を、進み続けたいだけだ!」


 踏み出す。


 虹と銀に輝く『黒衣』をまとった俺の動きは、音速をも超え、光の速さに達した。


 伯爵でさえ、反応できないほどの超神速。


「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇっ……!」


 絶叫する伯爵。


 悟ったのだろう。


 自分はこのまま殺されると。


 長い年月をかけて『力』や『権力』を蓄え続けてきた伯爵。


 神器の力を磨き、あるいは犯罪組織と裏でつながり――。


 あらゆる力を得ようとした。


 あらゆる力を得て、神に近づこうとした。


 神を、打倒しようとさえした。


 だが、それは今終わる。


 俺が放つ、さらなる力によって。


 そう、力とは、より大きな力によっていずれ叩き潰される……それが宿命だ。


 伯爵はそこから逃れられない。


「あるいは、いずれ俺も――」


 つぶやきながら、俺は一撃を繰り出す。


 真っ向から振るった槌で、伯爵の頭部を完全に粉砕した。

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