28 アーベルとの血闘


 ヴェルザーレの柄でアーベルの剣を受けた状態でのつばぜり合い――。


 俺はジリジリと押しこまれていた。


「へっ、押し返せないみたいだな! まずはお前の綺麗な顔を切り刻んでやろうか? ええ?」

 狼の仮面の下からアーベルが嘲笑する。

 すでにヴェルザーレの第二特性――対象神器の特性無効化――のチャージは開始しているが、まだ2分以上はかかるだろう。


 発動さえすれば、奴の甲冑は機能停止するはずだ。


 さっきと違い、それを修復できるガストンはもういない。

 つまり、第二特性を発動させれば、俺の勝ちは確定する。


 ──やるか、あれを。


「『影の支配者』──潜行開始ダイビング


 鍔迫り合いの体勢から、俺はいきなり足下の影に潜りこんだ。


「っ……!?」


 勢いあまって、前のめりになるアーベル。


『影の支配者』――その名の通り、影の中を移動できる神器。


 俺は影の中に身をひそめ、奴を見上げた。

 このまま3分をやり過ごせば楽だが、そうはいかないだろう。


「消えた? 逃げたか?」


 アーベルは周囲を見回し、


「だったら、まずお前らからだ──」


 と、レナたちに視線を向ける。


「くっ……」


 彼女たちの表情がこわばった。


「けけけ、まだ近くにいるならよく見ておけよ! 俺がこいつらを殺して――いや、先にたっぷり犯してやるかな? くくく、どいつも上玉だ。女としてのありとあらゆる屈辱を与えてやるぜぇ!」


 下種な台詞を吐くアーベルを、俺は冷ややかに見上げていた。


 想定通りだ。


 やはり俺が姿を消せば、彼女たちが狙われる。


「こっちだ、アーベル!」


 俺は影を飛び出した。


 声をかけたのは、レナたちに攻撃が及ばないように念を入れたためだった。


 案の定、振り返った奴に向かって、背後からヴェルザーレを一撃。


「があっ!?」


 背中を痛打したはずだが、致命傷には至らない。

 動物じみたカンと反射神経で、今の一撃を不完全ながらも凌いだのだ。


 さすがに学園ランキング2位は伊達ではない、か。



***


〇新作です!


『仲間に裏切られた俺は魔王に転生する。俺だけの最強国家を魔界に築き上げ、最強魔族の軍団を編成したので、地上にいる仲間の領土に侵攻する。さあ、待ってろよ裏切り者ども。』

https://kakuyomu.jp/works/16817330653076484659


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