19 潜入者


 SIDE ベアトリス


 ベアトリスは、学園内を進んでいた。


 ショートヘアにした赤い髪につぶらな瞳。

 愛くるしい容姿をした十七歳の少女だ。

 身に付けているのは、白いカチューシャと濃紺のエプロンドレス。


 メイド姿の彼女は、しかし他の者の目には学園の生徒として映るはずだった。


 クラスA神器『映像投影の指輪』の力である。

 彼女の主であるリオネル伯爵から授かった神器だった。


(ガストン様は無事かしら)


 内心でつぶやく。


 今ごろ老執事は標的に──ミゼル・バレッタに接触しているはずだ。

 彼の力を引き出し、かつ彼の真意を聞くために。


 ミゼルが伯爵の手駒になるなら連れて行く。

 敵になるなら粉砕する。


 ガストンに与えられた命令はその二つ。


 彼はクラスA神器を授かり、さらに『次なる段階』に達した強力な神器使いである。

 クラスS神器を持つミゼルにも引けを取らないだろう。


 だが、もしも失敗した場合は──。


 彼女がそのフォローをするよう、伯爵から命令を受けていた。


 リオネルの命令は絶対である。

 今までも、彼の命を受けて隠密行動から暗殺や色仕掛けにいたるまで、さまざまな任務をこなしてきた。


 もともと彼女は快楽殺人者の集団『殺戮の宴キリングパーティ』の一員だった。

 が、リオネルに見いだされて『殺戮の宴』から抜け、彼の屋敷で働くことになった。


 普段はメイドをしつつ、伯爵から命令を受ければ、あらゆる裏の仕事をこなす──そんな日々。


 任務を失敗したことは一度もない。


 ガストンが伯爵の右腕なら、彼女はさしずめ左腕。

 もちろん、今回もつつがなく遂行する予定である。

 と、


「……ガストンが死んだ」


 ふいに足下の影が盛り上がり、黒い狼のシルエットが出現した。


 伯爵の神器──その端末だ。


「ガストン様が……」


 息を飲む彼女。


「ミゼル・バレッタに殺されたようだ」


 狼を通じて聞こえる伯爵の声は、沈痛だった。


「お前が代わりにミゼルの下へ向かえ。そして、手筈通りに」

「承知いたしました」


 彼女は深々と頭を下げる。


 その結果、ミゼルにどんな目にあわされようとも構わない。


 傷つけられようとも。

 犯されようとも。

 殺されようとも。


 この身も、心も、すべては大恩ある伯爵に捧げているのだから。

 彼を、伯爵の下へ──。


「そのために、あたしはあたしに与えられた任務を遂行する」





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