18 ガストン戦、決着

 俺は両腕に力を込めた。


 クラスA相当の『黒衣』で腕力を増幅。

 そして、ヴェルザーレにクラスSをも超えた能力を発揮させる──。


 刹那、俺の持つ槌がまばゆい輝きを発した。


 神々しいまでに美しい、虹色の輝きだった。

 手ごたえすらなく、ヴェルザーレの破壊エネルギーが『盾』を粉々にした。


「馬鹿な!?」


 驚愕の声を上げるガストンを、真っ向から打ちのめす。


「ぐあっ……」


 冗談のような勢いで何十メートルも吹き飛ばされるガストン。


 まともに食らえば即死だろうが、盾を砕く際に破壊エネルギーがかなり相殺されていたらしく、老執事はかろうじて生きていた。


「ぐ……がが……」


 とはいえ、四肢が完全に砕け、立ち上がることさえできない様子だ。


 俺は虹色に輝く巨大槌を肩に担ぎ、倒れたガストンの下まで歩み寄った。


「……私の負け、ですね」


 ガストンは苦しげな息の下でつぶやいた。


「殺すのであれば、抵抗はしません。したところで無意味ですからね」

「命乞いはしないのか?」


 俺はガストンを見据えた。


 今までに殺してきた悪人たちは、その大多数が死の間際にみじめったらしく命乞いをしてきたものだ。

 もちろん、いっさい許さずに皆殺しにしてきたが。


 しかし、こいつは違う。


 自身の生き死にが俺の掌中にあるというのに、堂々とした態度だ。


「言っておくが、憐れみで見逃すことはない。俺が、悪を憐れむことはない」

「私が悪──ですか」


 ふっ、とガストンが笑った。


「私は、あの方の手駒。そしてあの方は──悪ではありません」

「虐殺伯と呼ばれ、犯罪者集団の背後に君臨する男が悪ではない、と?」


 戯言を。


 俺は苛立ちを覚え、ヴェルザーレを振り上げた。


「宮廷内での政争や暗闘……戦時での大量殺人や犯罪者組織とのつながり……ふふ、小さいことですよ。あの方の見つめるものは、もっと先に──」

「もういい。死ね」


 これ以上、戯言を聞くつもりはない。


 聞いている時間もない。


 俺は槌を振り下ろした。


 容赦なく。


 老執事の頭蓋を粉砕した──。





***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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