15 破砕VS盾4


「く……ううっ……!」


 大きく跳び下がる俺。


「かかりましたね!」


 ガストンが反転し、ナイフを抜いて襲いかかってきた。


「ちいっ……」


 取り回しの悪い超重武器のヴェルザーレでは、対応が間に合わない。


 とっさに俺は槌を放り捨て、左足でガストンに前蹴りを放つ。

 その勢いを利用して、大きく距離を取った。


「いい判断です。実戦慣れしているようですね」


 ガストンが温和な笑みを浮かべた。


 その前面に、暗褐色の盾が浮かんでいる。

 特性を破壊し、灰色に変色したはずの盾が。


 一体、どういうことだ──。


 俺はガストンの前方に浮かぶ『盾』を見据えた。

 確かに、奴の『盾』の特性を破壊したはず。


 なのに、なぜ復活している──?


「不思議ですか? 破壊されたはずの特性が復活していることが」


 ガストンが微笑む。


「今までの相手には通用したかもしれませんが……私は神器使いの『次なる段階』に達しています。そう簡単にはいきいませんよ」

「次なる段階……?」

「詳しい説明は省きますが、簡単に言えば……神器使いとしての能力や格が一段階上がったものとお考えください。その段階に達すると、所持する神器の性能も上昇するのです。だいたい一クラス上に相当するように──ね」

「一クラス上、だと」


 俺はごくりと喉を鳴らした。


 それは、つまり──。


「私のクラスA神器は、私が扱う場合に限り、クラスS相当になるということです」


 要は、奴は俺より格下の神器使いではなく、実質的に同格ということか?


「そして、おそらくあなた様の『特性破壊』は同クラスの神器には効果を発しづらいようですね。一度は特性を破壊された『盾』も、すぐに性能を取り戻しました」


 ヴェルザーレの第二特性も、無敵というわけではないのか。


 それとも──。


 いや、惑わされるな。


 そもそも奴の言葉がどこまで正しいのか分からない。


 俺の心を揺さぶるためのハッタリかもしれない。

 真実だとしても、ヴェルザーレの『特性破壊』が効果を発揮しづらい相手なら、別の手立てで攻撃すればいいだけだ。


 俺は頭の中を整理し、先ほど放り捨てた槌を拾った。


「当然ですが、性能が上昇するのは『盾』だけではありません。伯爵から授かった神器の欠片──この『鎧』も同様です」


 ガストンは笑顔のまま、無造作に歩みを進める。


「本来ならばクラスC相当の『魔狼まろうの装甲』ですが──私が扱えば、クラスB相当に早変わり、というわけです」


 クラスBの身体能力増幅装甲。

 つまりは、俺の『死神の黒衣』と同ランクというわけだ。


 こいつは──手ごわいかもしれないな。


 気持ちを引き締め直した。


 それでも、俺は奴を倒す。

 奴を、殺す。


 そして、早いところアーベルを追いかけるんだ。


 レナたち学園の生徒に危害が加えられる前に、必ず追いつき──確実にアーベルを始末する。

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