14 破砕VS盾3


「単なる敵に留まるなら始末し、仲間になり得る者なら陣営に引き入れたい──伯爵の思惑はそこにあります」

「悪いが、どちらにもならない」


 俺はヴェルザーレを手に一歩近づく。


 すでに、あの特性の発動は間近だった。


充填完了フルチャージ

殲滅力場放出ブラストフィールド・ファイア

『有効範囲内の敵対神器特性効果を破壊します』


 ヴェルザーレが光り輝く。


 ガストンとの攻防や会話の間に、すでにヴェルザーレの第二の特性を発動していたのである。


 同時にガストンの盾が変色した。

 暗褐色から、灰色に。


「これは──!?」


 ガストンの表情がこわばった。

 それからハッと気づいたように、


「……なるほど、神器の特性を破壊する特性ですか。さきほどアーベル様の鎧もこれを受けたわけですね」


 その身に付けている鎧は黒いまま。


 どうやら、そちらにまで『特性破壊』の範囲が届かなかったらしい。


 ……考えてみれば、この『特性破壊』の効果範囲を測定したことはなかったな。


 自分以外の神器使いを相手にしなければ、これを使用することさえできないわけだから、なかなかテストするのも難しいが──思ったより、有効射程が短いのかもしれない。


 まあ、今はそのことはいい。

 ガストンを片付けることが先決だ。


「さすがは死の女神が授けたクラスS神器ですね。まさか神器の特性まで『殺す』能力を備えているとは驚きです」

「反射さえ封じれば、後は破壊エネルギーを連打で叩きこんで打ち砕くだけ。終わりだ、ガストン」


 俺はヴェルザーレを掲げ、老執事に迫った。


 牽制代わりにまず一撃。

 ガストンは大きく跳び下がった。


 ごうっ!


 が、破壊エネルギーに巻き込まれたのか、右腕がひしゃげ、折れる。


「ぐううっ……」

「さすがに速いな。だが、いつまでも逃げきれないぞ」


 俺はふたたびヴェルザーレを掲げた。


「くっ……」


 ガストンもさすがに焦ったのか、背中を向けて逃げ出した。


 黒い鎧の特性を全開にして、超速で疾走する。


「逃がさない!」


 俺は『死神の黒衣』で身体能力を最大限に高め、ガストンに追いすがる。

 近づく背中に向かって、ヴェルザーレを叩きつける──。


 がつんっ!


 重く、硬い手ごたえがあった。


 同時に、衝撃波が吹き荒れる。


「っ!?」


 予想外の攻撃に、避けきれなかった。


 破壊エネルギーの嵐が、俺の右腕と右足をかすめる。

 それだけで黒衣が裂け、鮮血が噴き出した。



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