13 破砕VS盾2

 俺はヴェルザーレでガストンに打ちかかった。


 暗褐色に塗られた五角形の盾に、槌を叩きこむ。


 ごうんっ!


 不可視の破壊エネルギーが盾に衝突し──。


 次の瞬間、こちらに向かってきた。


「やはり、さっきと同じか」


 所見のときと違い、今回は予測できている。

 俺は漆黒のマントをひるがえし、なんなく反射攻撃を避けた。


「また避けましたか」


 ガストンは微笑みを浮かべたままだ。


 今のは、確認だ。

 やはり、クラスS神器の特性をもあの盾は反射できる──。


「言ったはずです。私の盾はクラスS神器といえども、容易には砕けません」


 ガストンがにこやかに説明する。


 温和な表情は、とても戦いに来たとは思えないほど。

 貴族の執事そのものだった。


「随分とその盾に自信があるようだな」


 余裕ぶったその態度が、妙に癇に障る。


「だが、守るだけでは勝てない」


 俺はヴェルザーレを構え、じりじりと間合いを詰めた。

 今度は、一足飛びに打ちかからない。


「確かに『反射』が通用しなければ、あなたを倒す手段はありません。ですが――一対一の戦いに勝つことだけが勝利ではありませんよ?」


 ガストンは余裕たっぷりだ。


 攻撃する気もなさそうだった。


 どうやら、相手は黒い鎧による身体能力増幅を活かした攻撃はしてこないようだ。

 露骨なまでに、防御一辺倒の構え。


「お前の役割はあくまでも時間稼ぎか……」


 その間に、アーベルを学園内で暴れさせるつもりか?


「あいつやナーグに神器を与えたのはなぜだ? 学園の生徒たちを危険にさらして、お前たちになんの意味がある」


 俺はガストンをにらんだ。


「呼び水、ですよ」

「何?」

「学園の生徒を守るためなら、あなたは必死で戦うかもしれない。それが──あなたの新たな力を呼び覚ますかもしれません」

「新たな力……」

「伯爵は求めているのですよ。己の仲間たりうる人材を」


 ガストンがオペラ歌手のように両手を広げ、謳うように宣言した。


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