12 破砕VS盾1

「むっ……!?」

 盾は奴の前方に浮いている。


 それを迂回するようにして、ガストン本体に攻撃を仕掛けた。


『黒衣』の能力を全開にしたスピードには、黒い鎧をまとったガストンもついてこれない。

 俺は奴の背後まで回りこみ、


「潰れろ」


 振り下ろしたヴェルザーレを、その頭部に叩きつける──。


 その、寸前。


「――ふっ」


 かすかな、嘲笑が聞こえた。


 ヴェルザーレが奴の頭部を粉砕する直前──。


「くっ……!?」


 俺は嫌な予感を察知して、攻撃を止めようとした。


 が、重量武器であるヴェルザーレは一度振り下ろしたら、それを途中で止めることなど不可能だ。

 ならば、と攻撃軌道を無理やり横に逸らす。


 がごおっ!


 校舎の壁が粉々に壊れた。


「──ほう、攻撃の方向を変えましたか。あのまま攻撃すれば、タダではすまないことを察知したわけですね」


 こちらを向いたガストンは感嘆の笑みを浮かべていた。


「さすがです、ミゼル様」

「最初から誘いだったのか」


 俺はヴェルザーレを構えたまま、ガストンを見据える。


「いえ、あなた様の予想以上の速度に反応できなかったのは本当です。ただし」


 ガストンがニヤリと笑った。


「反応する必要もないのですが。私の『盾』は、私を中心とした全方位を守護しますゆえ」


 目をこらす。

 分かりづらいが、暗褐色の盾からかすかな光が出ていた。


 その光が、ガストンを中心として二メートルほどのドーム状に広がっている。

 あれがすべて『盾』の特性有効範囲なんだろう。


 つまり、あれに攻撃を当てれば、その威力がそのまま自分自身に跳ね返ってくる──。


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