5 黒の超戦士5


「ちょこまか逃げ回りやがって」

「ぎぃ……ぃぃぃ……」


 アーベルとナーグがじりじりと近づく。


「だが動きが遅くなってるぜ……疲れたか?」

「ぎぎぎ……」

「お前の澄ました顔を恐怖で塗りつぶしてやる」

「調子に乗るな」


 俺は冷然と告げた。


「ここまでだ」


 ようやく160秒ほどが経過した。

 こういうチャージ系の武器を使うときは、時間経過の体感が異常に遅くなる。


 とっくに三分――いや十分くらい経っているような感覚だというのに。


 ともあれ、もう少しだけ時間を稼ぐ必要がある。


「ひゃははははは、お前の綺麗な顔を切り刻んでやる! 俺が味わったのと同じ──いや、それ以上の苦しみと屈辱を味わえ!」


 アーベルが哄笑とともに斬りかかってきた。


 ナーグがそれに続く。


「『影の支配者』起動」


 告げると同時に、俺の体が足下の影に沈みこんだ。


「なっ!?」


 アーベルの驚きの声。

 ナーグも戸惑ったように立ち止まる。


 第五の神器『影の支配者』。


 その特性は、影の中に移動できることだ。

 影に潜りながら奴らから距離を取り、向かってきたところでふたたび影の中に入って、やりすごし──。


 ついに三分が経過した。


充填完了フルチャージ

殲滅力場放出ブラストフィールド・ファイア

『有効範囲内の敵対神器特性効果を破壊します』


 神の槌からまばゆい光があふれ出した。


「なんだ、これ……!?」

「ぎぃぃぃ……!?」


 二人のまとう鎧が変色する。


 黒から、灰色へと。


 同時に、狼の仮面のようなナーグの頭が粉々に砕け散った。


 ふたたび頭部を失ったナーグは、ふらふらとよろめき、倒れる。

 そのまま二度と起き上がってこなかった。


 特性が失われたことで、それ以上の活動ができなくなったんだろう。


 あとは、アーベルだけだ。


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