3 黒の超戦士3

 前後から黒い鎧姿のアーベルとナーグが襲いかかる。


 そのスピードはまさしく黒い稲妻と形容すべきものだった。

 一流の騎士ですら反応できないレベルの速度。


 だが、『黒衣』をまとう俺の能力はさらにそれを上回る。


 奴らの繰り出す剣が、その軌道が、狙いが、すべて手に取るように分かる。

 最小限の動きで避け、カウンターで蹴りを叩きこんだ。


「くっ……!?」

「なんだと……!?」


 よろめくアーベルとナーグ。

 体勢が崩れた彼らに、続けざまにヴェルザーレを打ちこんだ。


「がっ!?」

「ぎいぅ……」


 アーベルが苦鳴を、ナーグが鉄の軋むような声を、それぞれ上げて倒れた。

 二人とも両足が異様な角度に曲がっており、さらに扁平に変形していた。



 今の攻撃で、二人の両足を砕いたのだ。


「これで素早く動き回ることはできないな」


 俺は冷ややかに告げた。


 さて、とどめといくか──。

 ヴェルザーレを振りかぶる。


「ふふふ、まだまだぁ……」


 ゆらり、と立ち上がるアーベル。


「こいつ……!?」


 俺はハッと気づいた。


 なぜ立ち上がれるのか――見れば、奴の両足はすでに元通りになっていた。


 さっきまでは左右の足が妙な角度にねじ曲がり、明らかに複雑骨折や粉砕骨折をしている様子だったというのに、だ。


「今のは痛かったぜぇ……」


 さらにナーグも立ち上がる。


 こちらも砕けた両足が元に戻っているようだ。


 どういうことだ……!?


 確かにヴェルザーレは奴らに命中した。

 足を砕く感触もあった。


 なら、もう一度――。


 スピードでは俺の方が完全に上回っている。

 奴らが反応できない速度でヴェルザーレを撃ちこみ、両足を砕く。


 ……結果は同じだった。


 あっという間に両足を再生させ、二人は平然と立ち上がった。

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