4 俺の行く道は

 ミカエラとの戦いを終えた俺に、語りかけてくる声――。

 それは足元の影から響いていた。


 ――お前は、この間の犯罪組織での戦いで、殺人者ではない者まで殺した。

 ──それは、本当にお前の考える正義に沿った行動か?


 俺を糾弾するような声。


 俺を……断罪するような声。


「誰だ……!?」


 足下の影を呆然と見下ろした。


 その中にたたずむシルエットを。


 銀色の髪に浅黒い肌、青く輝く右目、白いマント──。

 そして俺そっくりの、顔。


「お前……は……!?」

「俺は」


『影』が口を開いた。

 ニヤリと笑う。


「お前だ」

「なんだと……!?」


 こいつは、俺……?


 単なる比喩表現だろうか。


 それとも――。


「よくここまで成長させてくれたな。その調子でがんばれよ、ミゼル」


 影が笑う。


「何を……言っている……?」

「いや──お前こそが俺なのかもしれないな」


 俺の質問に答えず、影はひとりごちた。


「どういう意味だ……?」


 その問いかけにも答えは返ってこない。


 抽象的な、人をけむに巻くようなことだけを告げ、真実は教えない。

 嫌な奴だ。


 その先は自分で考えろとでも言わんばかりの――。


 俺が出す答えを試しているかのような、そんな雰囲気が伝わってくる。


「せいぜい自分を見失うなよ、『俺』」


 影は俺の質問にまるで答えず、好き勝手なことを言っている。

 その姿がすうっと薄れていった。


「とりあえず今日は挨拶だ。ようやく、こうして声が届くようになったことを祝して――はは、いずれまた会おう」


 さらに、薄れていく。


「『最果ての回廊』で──な。お前がそこにたどり着けることを願っているぞ」

「待て!」


 このまま思わせぶりなセリフだけを残して、逃げられてたまるか。


「さっきから何を言ってるんだ、お前は」

「『答え』には自力でたどり着け。それが神々の規定だ」


 その言葉を最後に、影は完全に消え去った。


 ──結局、奴はなんだったのか。


 分からないままだった。


 俺はしばらくの間、その場に突っ立っていた。


 奴の言うことは抽象的すぎて、まったく分からない。

 だけど、予感していることがあった。


 奴の言葉は――これからの俺の行く先の暗示。

 そしてその未来は、険しいものになりそうだ――と。

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