18 正義と正義の決着

 黒い金属質な表面から、虹色の輝きが。


 なんだ、これは──!?


『術者の習熟度及び精神性が規定レベルを超過しました。『次なる段階ネクストフェイズ』を限定解放します』


 どこかから、声が響く。

 同時に、ヴェルザーレの先端部が、


 ばぐんっ!


 音を立てて、左右に開く。

 放射版のようなパーツが飛び出し、そこから虹色の光が無数の矢となってほとばしる。


 光の矢が、ミカエラの光弾を貫き、爆裂させた。


「きゃあっ……!?」


 ミカエラは大きく吹き飛んだ。


 弾き飛ばされた細剣が、回転しながら地面に突き立つ。

 刀身や柄から白煙が上がっていた。

 さっきの衝撃で破壊されたんだろう。


「勝ったのは──俺の正義のようだな」


 ヴェルザーレを肩に担ぎ、俺はミカエラを見つめた。


「私が……負けた……!? 私の正義が──」

「神器がそうなっては、もう戦えないだろう」


 俺はヴェルザーレを肩に担ぎ、ミカエラを見据えた。

 あとは『認識阻害の指輪』で彼女の認識を改変しておこう。

 相手が強力な神器を持っていると無効化されるこの指輪も、今なら通用するかもしれない。


「ミカエラ、俺のことはいっさい忘れ、今後二度とかかわるな」


 告げて『指輪』を作動させる。


 ばちぃっ!


 彼女の前面でスパークが散った。


「私は……私が、負けるはずが……!」


 ミカエラの右目に緑の輝きが宿っている。

 魔眼の力がまだ残っていたか。


「私の正義が負けるはずがない──」


 絶叫とともに走り去るミカエラ。

 まるで、逃げるように。


 俺は追わなかった。


 確かに、彼女の正義は俺の正義とは相いれない。

 だけど、それは意見の違いに過ぎない。


 俺の『殺し』の基準は、あくまでも罪の数値にのっとっている。

 あくまでも──客観的な数値に依りたい。


 でなければ俺は、いずれ自分の主観で……いや、好き嫌いだけで人を殺す存在になってしまうかもしれない。

 そんな危惧があるからだ。


 だからこそ、主観ではなく客観で正義を下す。




 ──本当に、そうか?




 声が、どこかから聞こえた。


「誰だ……?」


 俺は周囲を見回す。


 ──お前は、この間の犯罪組織での戦いで、殺人者ではない者まで殺した。


「っ……!」


 ──それは、主観ではないのか?

 ──本当にお前の考える正義に沿った行動か?


 声は、俺の足元から響いてくる。

 そう、影の中からだ。


 といっても、そこに幽閉しているブルーノの声じゃない。


 もっと別の存在。

 ぼんやりとしたシルエットは、マントをはためかせたスラリとした人影だった。


「お前……は……!?」


 俺はさらに目をこらす。


 徐々に姿が鮮明に見えてくる。


 そいつの、姿は──。


※ ※ ※


次回から第8章になります。

また、次回更新は12月14日(火)の12時ごろになります。

少し間が空きますが、気長にお待ちくださいませ。



※ ※ ※


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