17 最後の激突

「私の正義を阻む者は許さない」


 ミカエラが剣を掲げた。


「私の正義を否定する者は許さない!」


 刀身がまばゆい輝きを放つ。


「私こそが正義……私こそが正義……私こそが正義……私こそが絶対の正義なのです!」


 膨大なエネルギーが衝撃波となって吹き荒れた。

 今までとはけた違いの威力だ。


 さすがに正面から受けるのは危険かもしれない。

 俺は『黒衣』の力を全開にして、超スピードでその場から離れた。


 たった今まで俺が立っていた場所を衝撃波がえぐり、小さなクレーターを作り出す。

 直撃していたら、肉も骨もバラバラだっただろう。


「──殺すつもりか? 俺を無力化して捕縛するんじゃなかったのか」


 俺は苦笑しつつ、身構えた。


 さすがにこれほどのエネルギーを相手に、余裕は見せられない。

 相手を殺す気でかからなければ、こっちが殺される――。


「無力化するにも、あなたの運動能力は高すぎる。クラスS神器の広範囲攻撃でダメージを与えるしかないんです……!」


 うめくような声で叫ぶミカエラ。


「あなたは、強い。ですから信じています。アルジェラーダの特性攻撃を受けても、必ず生き残ってくれると」

「もし死んだらどうする? あんたの正義は、それこそ全否定だ」

「信じている、と言ったはずです。さあ、受けなさい。ミゼル・バレッタ──」


 アルジェラーダがひときわまばゆい輝きを放つ。


「これが私の正義の一撃! 『清冽なる燐光砲バーストキャノン』!」


 ミカエラが、細剣を振り下ろした。


 こうっ……!


 鮮烈な輝きが黄金の光弾となって放たれた。


「くっ……!」


 迫る光弾に向かって、俺はヴェルザーレを叩きつけた。


 先端部から不可視のエネルギーが放たれ、光弾と激突する。

 すさまじい爆光が弾けた。


「重い……っ!」


 俺は思わず顔をしかめる。


 ヴェルザーレの柄を通して、すさまじい圧力が伝わってきた。

 約33倍に強化された俺の腕力でも、押し返せない。


 両腕が、ちぎれそうだ──、


「当然です! これは私が今まで正義の戦いを行ってきた中で吸収してきた悪人たちの魂を、攻撃エネルギーに転換して撃ち出したもの。その威力は、そのまま私の正義の密度と量なのです!」


 誇らしげに叫ぶミカエラ。


 悪人の魂を吸収……か。

 つまり、今まで溜めてきたエネルギーを一騎に解放する特性、という感じなんだろう。


 ヴェルザーレの不可視の力でさえ叩き潰すことも、押し返すことさえもできないとは──。

 さすがはクラスS神器といったところか。


 びきっ……!


 ヴェルザーレの先端部に亀裂が走った。


 ここまでの威力とは──。


「さあ、私の前に屈しなさい、ミゼル・バレッタ! 悪なる者よ!」


 ミカエラが芝居がかった台詞を叫ぶ。


「何が──悪なる者だ」


 俺の闘志に火がついた。


「あんたが自分の正義を阻む者を許さないというなら、俺も同じだ。俺は、俺の正義を貫く──」


 ──刹那。


 ヴェルザーレが淡い輝きを放った。

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