14 正義の味方と正義の騎士3

 ばちぃっ!


 俺が神器を発動させた瞬間、ミカエラさんの前方でまばゆい稲妻が弾けた。


「これは──!?」

「精神干渉系の神器ですか。しかし、より上位の神器の前には効力を発揮できないようですね」


 ミカエラさんが淡々と告げた。


「このクラスS神器『アルジェラーダ』の前には」

「俺を、捕らえる気か」


 クラスS神器といえば、俺のヴェルザーレと同格だ。

 今まで戦ってきた神器使いとは違う。


「それとも、殺す気か」

「あなたが悪だとしても──命を奪うことはしません」


 ミカエラさんの瞳は、俺を非難しているように見えた。


 悪を、殺す。

 俺のやり方を真っ向から否定しようとしている。


「ミゼル・バレッタくん、あなたを大量殺人容疑で捕縛します」

「──やれるものなら、な」


 凛と言い放つミカエラさん──いや、ミカエラを前に、俺は身構えた。


 これから先も、まだまだ悪人を狩らなければならないんだ。

 父さんや母さん、姉さんの仇を討って終わりじゃない。

 むしろ、踏ん切りがついた以上、今まで以上に悪人狩りに励みたい。


 それを中途で終わらせてたまるか。


「俺の正義は、誰にも阻ませない」


 ヴェルザーレを構え直す俺。


 悪を殺して、殺して、殺して。


 殺し続ける。


 滅ぼす。


 駆逐する。


 それが俺が進むべき『正義の道』なんだ。


「私はあなたの正義を認めません」


 ミカエラもまたアルジェラーダを構え直した。


「あなたの魂には、強い善性が宿っています。ですが、同じくらい──邪悪な色合いも混じっているのです」


 それが、彼女の神器によって見えた俺の『魂』というわけか。


 俺の中の善と悪。

 俺の中の──光と闇。


 それは俺自身の行動が善悪を内包している、という証しなんだろうか。

 それとも──。


「まずはあなたを無力化します」


 告げて、ミカエラが突進する。


 俺は意識を戦闘に戻した。


「速い──」


 授業のときとは段違いのスピードだ。

 もし俺が『死神の黒衣』をまとっていなかったら、反応すらできずに斬られていただろう。


 いや、彼女は俺を無力化しようとしているから、単に剣を突きつけられて終わるかもしれないが。

 だが、『黒衣』の完全解放モードを身に着けている俺は、その一挙手一投足を正確に捉えることができる。


 彼女の刺突を避け、右後方に跳ぶ俺。


「──『視えて』いますよ」

「っ……!?」


 見計らったように、ミカエラが斬撃の軌道を変えた。


「ちいっ」


 俺は舌打ち交じりに体をのけぞらせる。


 避けきれない一撃が『黒衣』の胸元を切り裂いた。

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