12 正義の味方と正義の騎士1


 そして──放課後。


 俺は校舎の裏庭に行き、ミカエラさんが来るのを待った。


「わざわざ呼び出して申し訳ありません、ミゼルくん」


 ミカエラさんが歩いてくる。


「あなたには色々と聞きたいことがあります──『祝福を灯す正義の剣アルジェラーダ』」


 告げた彼女の手から光があふれる。

 その輝きが収束し、一本の剣の形を取った。


「王立騎士団は平時には国内の治安を、戦時には外敵からこの国を守るのが責務です」


 ミカエラさんが言った。

 その手に、輝く細剣を下げたまま。


「今は我が第三番隊も治安維持のために、日々活動しています。悲しいことに、フリージアでは犯罪が絶えませんから」

「──何が言いたいんです?」


 俺は警戒心をあらわに、彼女にたずねた。


 いきなり神器を出すなんて明らかに臨戦態勢だ。

 まだ構えてはいないが、いつ斬りかかってきてもおかしくない。


 あるいは、構えなくても攻撃可能な特性を持つ神器かもしれない。

 俺はすでに『死神の黒衣』を収納モードで起動している。


 いざ戦いとなれば、すぐに対応できるように。


「通常の犯罪者への対処は、私の部下たちが頑張ってくれています。ですから私は、彼女たちには対処できないレベルの犯罪者を主に担当しています。通常の騎士では太刀打ちできず、いたずらに人死にを出してしまいそうな相手を」


 ミカエラさんが一歩近づいた。


「たとえば──神器使いを」

「……さっきから、なんの話をしているのか分かりませんね」


 とりあえず、しらを切った。


 俺が神器使いであることはバレているようだが、だからといって素直に話す必要もない。

 相手が殺人者なら、問答無用で叩き潰せばいい。


 だけど、彼女は王立騎士団の隊長だ。

 俺が志した組織の一員だ。


 本来なら同じ『正義の味方』として、ともに歩むべき仲間──。


「私の神器『真実の魔眼』には遠隔視の特性があります。その特性であなたの行動を──いえ、犯行を目撃しました」


 剣を手に告げるミカエラさん。


「遠隔視……?」


 すでにバレている、ということか。


 俺の中で急激に緊張感が高まる。

 同時に闘志と――殺意が。


 間違っても――呑気に構えてはいられない。

 今この瞬間にも、ミカエラさんは敵に回るかもしれない。


 俺は即座に方針変更を決意する。


「『死神の黒衣』──完全解放セットアップ

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