11 レナの追及
「……ねえミゼルくん。今、ミカエラさんと何を話してたの?」
レナがじとっとした目で俺を見た。
「ん? 授業のことで、ちょっとな」
俺はとっさに誤魔化す。
「ふーん……?」
レナがすうっと目を細めた。
「なんとか同士で話したいとか言ってなかった? よく聞こえなかったけど」
「っ……!」
まさか、感づかれたのか?
いや、話の一部が聞こえただけかもしれない。
とりあえず『認識阻害の指輪』を使っておくか。
レナが今聞いた話を、別の話題へと切り替える。
認識をすり替えるのだ。
「ん、なんの話だ?」
「えっと……なんだっけ? あ、そうそう、ミカエラさんがミゼルくんにアプローチしてるんじゃないか、ってこと」
「アプローチ?」
「放課後、一緒にどこかへ行こうって誘われたでしょ? ちらっと聞こえたよ?」
レナの目が冷たい。
さっきの十倍──いや百倍は冷たい。
「いや、それは――」
「まさかデート? ねえデートなの?」
「教師と生徒でそんなことするわけないだろ」
「禁断の恋って燃えるよね」
「いやいや」
「そうだよね、ミゼルくんって年上も守備範囲だもんね……ぶつぶつ」
などとつぶやいているレナ。
誤解は解けそうになかった。
とはいえ――これはこれでいい。
予想したのと少しズレた方向だが、神器関係はごまかせたようだからな。
「せっかく一緒の授業だったのに、あまり話せませんでしたね、ミゼル先輩」
ジークリンデがやって来た。
「残念です」
「同じ学校にいるんだし、話そうと思えばいくらでも話せるだろ」
「えっ、じゃあ、今度はゆっくり会えますか?」
ジークリンデが目を輝かせる。
「用があるなら、会いに来ればいい」
「は、はいっ」
なぜか顔を赤らめ、ジークリンデがうなずく。
「緊急の用でもあるのか? 俺は、放課後にちょっと用事があるから、必要なら昼休みにでも──」
「い、いえ、用事というか、ただミゼル先輩ともっとお話ししたかっただけというか……」
ジークリンデはますます顔を赤らめた。
「すみません、またいずれ……えへへ」
照れ笑いのような表情で、彼女は去っていった。
「……年下も守備範囲だよね、ミゼルくんって。むむむむ」
背後でレナがぼそっとつぶやいた。
「!?」
今、気配をまったく感じなかったぞ……。
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