8 魂の色

SIDE ミカエラ



『危険度:A-』

『方向:右側面』

『攻撃:打ちおろし』

『時間:2.1秒後』

『攻撃:刺突』

『方向:前方』

『時間:3.2秒後』


「見える──」


 ミカエラは右目に宿る神器『真実の魔眼』を発動し、ミゼルの動きを見極めていた。

 この神器を使っている間、術者にはわずかな隙ができてしまうため、強敵相手の実戦では使えない。


 ただ今回のような模擬戦にはうってつけだ。

 仮にその隙を突かれて敗れたとしても、致命傷を負うわけではないのだから。


 魔眼の特性は、三つある。


 一つ目は、今のように対象の攻撃を予知すること。

 ごく簡単な動作しか読めないし、あまり先の未来まで探知することはできない。


 二つ目は、任意の場所の状況を遠隔視すること。

 先日『鮮血の牙』アジト内での戦いを、まるでその場にいるように見ていたのは、この特性によるものだ。


 ただし発現が不安定であり、必ずその場の状況を見ることができるとは限らない。

 また連続稼働に限界があり、あまり長時間見ていると、しばらくの間は再使用ができなくなる。


 とはいえ、現在だけでなく、ある程度過去の出来事まで記録映像として見ることができる、極めて優秀な特性であることは間違いない。


 そして三つ目は──対象の『善悪』を見極めること。

 これを発動すると、相手の魂が『善』なのか『悪』なのかを、色彩情報として認知できる。


 百パーセント善性の人間も悪性の人間も基本的にいないため、正確にはその人間の善悪の割合を察知できる──ということになる。

 善性が強い人間は白色のオーラをまとい、悪性が強い人間は黒色のオーラに包まれる。


 文字通り、白か黒かを見切ることができるのだ。

 そして今、ミカエラの眼にはミゼルの『魂』が示す善悪の色が映っていた。


(これは……どういうことですの?)


 白でも、黒でもない。

 ミゼルの体からは、その二色のオーラが同時に・・・立ち上っていた。


(初めて見る現象です──)


「はあああっ!」


 気合いの声とともに、ミゼルが斬りかかってきた。


「……くっ」


 ミカエラは慌てて後退する。

 彼の魂の色に動揺して、もう少しで一撃を食らうところだった。

 いったん距離を取り、あらためてミゼルの魂を見つめる。


『魂レベル:A+』

『オーラ量:S-』

『特殊発現:有』

『領域深度:B+』


『魔眼』でそんな表示を読み取る。

『特殊発現』や『領域深度』という項目も初めて目にするものだ。


「ミゼルくん、あなたは一体──」

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