7 VS正義の騎士

「では、あらためて──よろしくお願いしますね」


 ミカエラさんが剣を体の正面に立て、一礼した。

 正式な騎士の礼だ。


 俺も答礼し、剣を構え直す。


 さて、どうするか。

 とりあえずは様子見だけど、せっかく王立騎士団の正規騎士──それも国内で三強と謳われる達人と訓練できるんだ。


 ただ何もせず負けるだけ、というのは、あまりにももったいない。

 かといって、神器の力を見せすぎると怪しまれるかもしれない。

 ……なんて思案しているうちに、


「すでに模擬戦は始まっていますわよ。集中してくださいませんか?」


 ミカエラさんがわずかに眉を寄せた。


「……失礼しました」


 俺は彼女をまっすぐに見据える。


 次の瞬間、ミカエラさんの体が──ブレた。

 いや、そう錯覚するほどの高速移動だ。


 さすがに、速い。


「まだ加速しますよ」


 つぶやき、ミカエラさんの突進速度は宣言通りに倍加する。


「これは──!?」


 この速度は明らかに人間の域を超えている……!

 まるで俺の『死神の黒衣』のように。


 身体能力を何倍にも、何十倍にも増幅しているかのように。


「……ちいっ!」


 俺は反射的に『黒衣』の能力を解放していた。

 稲妻のような刺突を、身をのけぞらせるようにして紙一重で避ける。


「かわした!? ──ですが、まだっ!」


 ミカエラさんは驚きの声を上げつつ、瞬時に体勢を変えて第二撃を放ってきた。

 この反応は、さすがに王立騎士団の隊長クラスだけのことはある。


「くっ……」


 俺はさらにバックステップし、その第二撃も避ける。


 力を見せすぎているだろうか。

 もっとセーブすべきか。

 と、


「手加減は無用ですよ、ミゼルくん。もっと速く動けるでしょう?」


 ミカエラさんの右目に緑色の輝きが宿っていた。


 これは、神器の光──!


 この人は一体……!?

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