5 新任女教師
「嘘、あのミカエラさん……!?」
「王立騎士団三強の一人──」
「すごい美人……!」
たちまち周囲がざわめいた。
もちろん俺も驚いていた。
顔はよく知らなかったが、さすがにミカエラ・ハーディンの名前は知っている。
フリージア王国の全騎士の中で最強の三人に数えられる女傑。
卓越した剣腕と強大な魔力を併せ持った『
「近年、この学園には有望な生徒が多く集まるようになったと聞いております。将来は王国騎士団の礎になるであろうその者たちを鍛えるのに力を貸してほしい──私はそう言われて、特別講師として招かれました」
ミカエラさんが俺の方を見た。
「ミゼル・バレッタくん。レナ・ハーミットさん。それに──ジークリンデ・ゼルーネさんとターニャ・ミルバさんもそろっていますね」
「えっ?」
振り向くと、そこには二人の女生徒の姿。
金髪碧眼、気真面目そうな顔立ちの一年生──『女帝』の二つ名を持つジークリンデ。
黒髪を長く伸ばしたクール系の三年生──『
ターニャ先輩は以前に殺人鬼『
しばらく休養していたんだけど、ようやく退院できたらしい。
「……ターニャ先輩」
「ひさしぶりだ、ミゼル、レナ」
彼女はクールに微笑んだ。
「傷は、もういいんですか」
「ああ。おかげですっかり元気になった。傷痕も全然残らなかったぞ。最近の医療魔法はすごいな」
微笑むターニャ先輩。
「よかったです~!」
レナが嬉しそうに彼女に抱きついた。
「レナも久しいな。元気そうで何よりだ」
「心配してたんですからね」
「ああ、何度も見舞いに来てくれたな。ありがとう」
ターニャ先輩がレナの頭を、わしゃわしゃ、と撫でた。
「も、もう、だめですよ、髪が乱れちゃいます~」
言いつつも、レナは嬉しそうだ。
「ジークリンデも呼ばれたんだな」
「は、はい、よろしくお願いします、師匠」
「師匠はよせ」
緊張気味のジークリンデに俺は苦笑した。
「あ、つい……失礼しました、ミゼル先輩」
ジークリンデは口元に手を当て、慌てたように頭を下げる。
彼女とは、殺人者集団『
神器で『認識阻害』をし損ねたため、ジークリンデは俺が『殺戮の宴』の連中を殺し回ったことを知っている。
それについては口止めしたが、以来彼女は俺に剣の訓練をせがむようになった。
「ん、ミゼルはジークリンデと知り合いなのか?」
ターニャ先輩が俺とジークリンデを見た。
「ええ、まあ……ちょっとした縁で」
「随分と慕われているようだ」
ふふん、とシニカルに笑うターニャ先輩。
「レナをあまり不安がらせるなよ?」
「なぜそこでレナの名前が出てくるんですか?」
「……君はもう少し乙女心を学んだほうがいい」
なぜかため息をつかれてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます