2 殺戮の後(ミゼルSIDE)

『鮮血の牙』を壊滅させた俺は、騎士学園の男子寮まで戻ってきた。


 今は自室で一息ついているところだ。


「七つ目の神器解放に必要なスコアを教えてくれ」


『600000です』


 俺の呼びかけに、どこかから声がした。


 六つ目の『魂への浸食者』の必要スコアが75000だったから、ちょうど八倍か。

 ……また随分と増えたものだ。


 おそらく千人単位の悪を殺さなくては到達しないだろう。

 死の女神ヴェルナの話によると、俺の前の神器の持ち主は八つ目まで解放していた、ということだった。


『大してスコアを稼げないうちに、他の神器使いに殺された』なんて言っていたが。

 それでも数千人以上殺さないと、おそらく第八神器までは解放できない。


 ヴェルナにとっての大したスコアというのは、どれくらいの数字なんだろう。

 考えると恐ろしくなる。


 まあ、死の女神だからな……。


「さて、と」


 俺は立ち上がった。

 部屋を出て、中庭に行く。


 まず確かめなければならないことがあった。

 月明かりの下、俺は足元の影を見つめる。


 そこにはさっきの戦いで捕らえたブルーノの姿。

 こいつの『分身宝珠ぶんしんほうじゅ』を使い、神器解放に必要なスコアを稼ぐ──。


 その確認と実行だ。


「聞こえるか、ブルーノ」


 俺は足元の影に呼びかけた。


『ひ、ひいっ……』

「おびえるな。何もしない」


 恐怖の表情を浮かべるブルーノに、俺は淡々と告げる。

 第六の神器『魂への浸食者』でさんざん悪夢を見せたことが、奴のトラウマになっているんだろう。


「ただし俺の言うことを聞けば、な。逆らえば、また悪夢の世界に逆戻りだ」

『な、なんでも言うことを聞きます……だから、あれはもうやめてくださいぃぃ……』


 ブルーノの態度はすっかり従順になっていた。


 おかげで助かる。


「今から俺がいくつか質問をする。お前は正確に回答しろ。いいな?」

『質問……?』

「嘘や不正確な答えだった場合は、また悪夢を見せる」

『わ、わ、分かりましたぁっ』


 ブルーノは蒼白な顔で叫んだ。


「じゃあ、最初の質問だ――」

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