27 組織の終焉2

「ば、馬鹿な! ラングはどうした? ジェイムスは? ブルーノも何をやっている? 誰か、さっさとこいつを殺せ!」


 俺を前にしてボスはうろたえているようだった。


「そいつらは道すがら殺しておいた。お前を助ける者はいない」


 おそらくラングとジェイムスは騎士崩れと傭兵崩れのことだろう。

 道中に現れた構成員の中では、頭一つ二つ抜けた腕前だった。


 最後のブルーノは殺したわけじゃなく、俺が捕獲したんだが、そこまで細かい説明をする必要はないだろう。


 こいつを助ける者はいない、という言葉に偽りはない。


「お、俺を……殺す気か? 貴様、『黒魔風デモンゲイル』の手の者か?」


 ボスが後ずさった。


「さあな」


『黒魔風』というのは『鮮血の牙』に敵対している組織の名前だ。

 ボスは俺のことを敵対組織が差し向けた刺客だと勘違いしているんだろう。


 説明するのも面倒だし、説明する意味自体ない。


 今から、こいつは死ぬのだから。


 俺はヴェルザーレを手に、ボスへと歩み寄る。


 いちおう『魔眼』で見てみたが、当然のように殺人や強盗、婦女暴行などさまざまな罪の記録で埋め尽くされていた。


 躊躇も遠慮もまったく必要ない。

 生きる価値のない悪だ。


 さっさと殺してしまおう。


「ま、待て、金なら出す! 『黒魔風』からいくらもらったんだ? その倍──いや、三倍出そう!」


 俺は構わず進む。


「五倍だ! じ、十倍! そ、そうだ、お前の言い値で!」


 さらに進む。


「よせ! 俺たちのバックにはフォス公爵がついてるんだぞ!」


 買収できないと悟ったのか、ボスは必死の形相で叫んだ。


 俺は、止まらない。


「あ、あのフォス公爵だぞ! ラバン伯爵と並んでフリージアの二大巨頭だ! 怖くないのか!?」

「それがどうした」


 ヴェルザーレを振り上げ、ボスを見据える。


「俺は殺すべき悪を殺すだけだ。その背後に誰がいようと、そいつがどれほどの力を持っていようと関係ない」

「お、お、俺に武器を向けるってことは、公爵に武器を向けるってことだぞ!」


 震える声で叫ぶボス。


「だから、やめろ……やめてくれ──」

「その公爵も蹴散らし、潰すだけだ──殺すべき悪ならば」


 おびえるボスに、俺は巨大な槌を叩きつけた。




 俺の家族をあれほど苦しめた犯罪組織『鮮血の牙』は──。

 たった今、壊滅した。

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