25 処遇

 それは──時間にすれば数分程度のことだろう。


「はあ、はあ、はあ、はあ……」


 ブルーノの顔はすでに蒼白だった。

 顔中に脂汗が浮かび、歯の根がカチカチと鳴っている。


 対象に幻覚を見せ、『死ぬ一歩手前の恐怖と苦痛』を無限に味わわせる──。

 それが、俺が神器『魂への浸食者』に下した命令だ。


 さらに追加条件として、『対象の精神が破壊される前に、その状態を解除する』というのを加えておいた。

 ある程度、条件を細かく指定できるらしく、色々と使い勝手がありそうだ。


「こ、ここは──」


 ブルーノの両目に焦点が戻った。

 どうやら幻覚が解除されたらしい。


「ひ、ひいいい……助け……」


 潰れた右足を引きずるようにして、俺から後ずさるブルーノ。


「逃げるな」


 俺はヴェルザーレを振るい、左足も叩き潰した。


「ぎ、ぎゃぁぁぁぁああああああああああああぁぁぉぉぉおおおっ!」


 両足を潰されたブルーノが激痛に顔を歪めて絶叫する。


「さて、お前の処遇だが──」


 思案する。


 もちろん、最終的なこいつの末路は『死』だ。


 俺が必ず殺す。

 それもあらゆる苦痛と絶望を味わわせたうえで。


 だが、現段階でブルーノを殺すのは惜しい。


 こいつの神器には大きな利用価値がある。

 なにせ、分身したブルーノを殺すと神器解放に必要なスコアとしてカウントされるようだからな。


「喜べ。当面は生かしておいてやる」


 俺はブルーノに微笑みかけた。


「え、ええ……っ?」


 奴は、信じられない、といった顔で俺を見上げる。


「ただし拘束させてもらう。そうだな──」


 どうやってこいつを封じるか。


 単に縛ったりするだけでは、分身能力を利用して逃げられてしまうかもしれない。

 もっと確実に捕獲する方法が必要だ。


「──そうだ、あれなら」


 俺はふと思いついた。


 第五の神器『影の支配者』。

 その特性は影の中を移動すること。


 俺がブルーノごと影の中に入り、こいつだけを置き去りにしたら──どうだろう?


「な、何をする気だ……?」

「安心しろ。痛みはない」


 おそらく、な。


 ただし――。




※ ※ ※


随分と間が空いてしまい、すみません……。

ちょっと他の書籍化作業とかでバタバタとしてました(´・ω・`)

ぼちぼちこっちも再開していきます~!



新作掲載中です。

『黒き剣帝 元最強のアラフォー全盛期を取り戻して無双ハーレム』

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