24 絶望の世界3

 次の瞬間、全身をすさまじい熱が襲った。


 視界が真っ赤に染まる。

 足元にくべられた無数の木切れが燃え、それが自分の体にまで燃え移っている。


(まさか俺は──火あぶりにされるってのか!?)


 炎に包まれ、気の遠くなるような痛みとともにブルーノの意識がぼやけ、そして──。




「どこだ、ここは……っ!?」


 意識が戻ると、また別の場所にいた。


 あちこちから響く雄叫びと苦鳴。

 剣と剣が打ち合わされる音。

 矢が肉を貫く音。


 ここは──戦場だ。


 兵士や騎士、傭兵が二手に分かれて戦っている。

 ブルーノはナイフ一本でそんな戦場にたたずんでいた。


「こ、こんな武器で戦えるかよ……!」


 眼前には巨大な剣を構えた騎士がいた。


「ひ、ひいっ……」


 分身を作り出そうとしたが、まだ待機時間クールタイムが終わっていない。


 慌ててナイフを掲げるが、大剣がそれをブルーノの腕ごと切断する。


「ぐあっ!」


 激痛に顔を歪めるブルーノ。


 大剣はなおも勢いを緩めず、


「があっ……!」


 右肩を深々と斬り裂かれた。


「がっ……あああああっ……」


 体をよじって、無理やり剣を引き抜く。

 もう少しで内臓ごと全部両断されるところだった。


 肘の辺りで切断された右腕が熱い。

 痛みにうめきながら、ブルーノは這うようにして、その場から逃れた。


 だが、逃げた先には別の騎士がいた。


「腰抜けが! 逃げるんじゃない!」


 嘲笑とともに、その騎士が剣を振り下ろす。


 ブルーノはもともと暗殺を得意としており、正面からの戦いはそれほど得手ではなかった。

 手練れらしい騎士を相手に抗するすべもない。


「ぎゃあっ……!」


 胸元を切り裂かれ、鋭い痛みにブルーノは悲鳴を上げた。


 斬られながら、ぼんやりと理解し始めていた。

 この異常な状況の意味を。


「まさか……俺は……」


 かすれた声で、うめく。


 ここで殺されれば──いや、その寸前までいけば、また別の場所に移動する。

 そして、そこでも同じように『死』と直面する。


 死ぬ一歩手前まで激痛を味わわされ、絶望し続けるのだ──。

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