21 第六の神器

 俺の右手から光があふれ、小さな宝玉が浮かび上がった。

 表面に「6」と刻まれた宝玉だ。


 同時に、いくつものメッセージが表示される。


『神器No.6の解放条件をクリアしました』

『名称:魂への浸食者』

『クラス:B』

『タイプ:寄生(成長)』

『効果:対象の精神に幻覚、催眠など一定レベルの干渉が可能。習熟度に従い、干渉効果が増大します』


「これ……は……?」


 確か、前に見たときは第六神器解放の必要スコアは75000だった。


 単純計算でも100人から200人近い悪を殺さなければならないはずだが──。

 考えたところで、ハッと思い至る。


「まさか……」


 俺はブルーノの分身を九十人前後、殺した。

 それもすべてスコアとして加算されているのか?




 ぱり……んっ。




 甲高い音を立てて宝玉が弾け、無数の光の粒子と化した。

 それは黄金の軌跡を描き、俺の右手に吸いこまれる。


 右手の甲に髑髏の紋様が浮かんでいた。

 蒼い輝きを発したその紋様は、しばらくすると消えてしまう。


 第五の神器『影の支配者』が左手の甲に宿り、髑髏の紋様と化したように、こいつは右手の甲に宿ったのか?


「対象の精神に干渉……か」

「な、何を……?」


 おびえたようなブルーノ。


 俺は答えず、黙考した。


 つまり──第六神器を使えば、奴の肉体ではなく精神に苦痛を与えることが可能、ということだろう。


 苦しめるだけ苦しめて、殺す。

 少なくとも父さんや母さん、姉さんの苦しみ以上の──圧倒的な苦痛を。


 それには肉体を痛めつけるだけじゃない。

 精神も徹底的になぶり、痛め、傷つけ、そして最後に破壊するんだ。


「次の制裁だ、ブルーノ」


 俺は奴に向かって右手を伸ばした。


「ひ、ひいっ……嫌だ……」

「安心しろ。今度はお前を痛めつけはしない」


 俺はニヤリと笑った。

 ひきつったような笑みになってしまった。


 それを見て、ブルーノはますますおびえた表情になる。


「肉体はいっさい痛まないはずだ。ただし──」


 それ以上の苦痛を味わうことになるかもしれないが。


「せいぜい恐怖するがいい」

「な、なんだ。何をするつもりなんだよぉ……」


 かすれた声でうめくブルーノ。


「『魂への浸食者』──精神貫撃ぺネトレイト


 手の甲に青い髑髏の紋様が浮かび上がり、閃光が弾ける。


「ぐっ!? があっ……!?」


 眼前でうめくブルーノ。


「心が壊れる一歩手前まで──無限の苦痛を味わってこい」


 俺は冷ややかに告げ、神器を発動させた。

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