20 今、あの日の想いを6

「化け物……がぁっ……!」


 ガタガタと震えながら、ブルーノは壁際まで後ずさった。


 俺は数メートルの距離を保ったまま、奴を静かに見据える。

 その表情を見ているだけで、恐怖心や絶望感がこれ以上ないほど伝わってくる。


 俺は奴をにらんだまま、しばらく待った。


 ふたたび分身可能になるまで、時間を与えてやる。


 やがて──ブルーノの姿がみたびブレた。

 今度は四十人のブルーノが出現する。


「は、はははははは……今度こそ逃げてやる──」

「逃がすはずがないだろう」


 俺は本体の動きを確認し、奴の退路を断つように動き回った。

 分身体を手当たり次第に潰し殺し、あるいは拳や蹴りで叩き殺す。


 本体にだけは手を出さず、逃がすこともせず──。


 ほどなくして、周囲に四十人分の死体が追加された。

 合計で九十人前後のブルーノの死体が、辺りに転がった。


「なんだよ……なんなんだよ、お前ぇ……」


 ブルーノはその場にへたり込んだ。

 完全に泣き顔だ。


「どうだ? 後悔しているか? お前が殺した数だけ、お前の分身を殺してやろう」


 血にまみれて打突部から柄まで真紅に染まったヴェルザーレを肩に担ぎ、俺は笑った。


「さあ、待ってやるから次の分身を作れ」

「た、頼むよ、もう見逃してくれぇぇぇぇぇぇぇぇっ……ぐあっ!?」


 俺はヴェルザーレを振りおろし、奴の右足を潰した。


「ぐあぁぁ……あ、ぎゃぁぁぁぁ……」

「これで簡単には逃げられないな」


 じわじわと、追い詰めるために。


「く、くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ……!」


 絶叫するブルーノ。


 今度は五十人の分身が現れる。


「そいつらも皆殺しだ」


 俺は淡々とヴェルザーレを振るった。

 今までと同様に、一人一人殺していく。


 ──と、そのときだった。




『スコア75000に到達しました』

『神器No.6の解放条件をクリアしました』




 突然、声が響いた。

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