19 今、あの日の想いを5

「た、盾になれ、お前ら!」


 ブルーノたちの一人が叫んだ。


「ちっ」

「本体の命令には逆らえねーな……」


 残り四人が進み出て、俺の前に立ちはだかる。

 てっきりこの二十人全員が分身だと思ったんだが、さっき叫んだ奴が本体のようだ。


「どっちみち全部潰すから関係ないが──」


 俺はヴェルザーレを旋回させた。


 連なる苦鳴。

 まき散らされる鮮血。


 あっという間に四人を叩き殺し、残るは本体だけだ。


「ひ、ひいいいいい……」


 青ざめた顔で後ずさるブルーノ。


「もう一度だけ聞くぞ。お前は今まで殺め、傷つけてきた人たちに何か言うことがあるか?」

「……っ!」


 ブルーノは息を飲んだようだった。


「わ、悪かった! 私が悪うございましたぁぁぁっ! 今までの罪をすべて認めます! こ、このとおり謝罪しますぅぅぅぅぅぅぅっ! だから殺さないでぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 涙混じりに絶叫する。

 地面に這いつくばるようにして土下座し、額を床にこすりつけた。


 なんとも無様な姿だ。


 さて、どうするか──。


 もちろん許すという選択肢はない。

 あるはずがない。


 ただ、一思いに殺すつもりもなかった。


 たっぷり苦しませてから殺したい。

 たっぷり恐怖させてから殺したい。


 父さんや母さん、姉さんの苦しみと無念、怒りと悲しみ、屈辱と絶望を……それらすべての数倍、いや数十倍、いや数百倍、いや数千倍──。


「極限まで味わわせてやる。楽には殺さないからな、くくく」


 俺は自然と笑っていた。


 と、その瞬間、ブルーノの姿が突然ブレる。


「これは──」


 今度は三十人ほどのブルーノが出現した。


「ははははははは! ようやく新たな分身ができたぜぇ。こいつは大量の分身を作ると時間がかかっちまうのが欠点でなぁ」


 素早く跳びさがるブルーノ本体。


「無駄なことを」


 俺はヴェルザーレを掲げた。


「たとえ三十だろうと三百だろうと──殺し尽くすだけだ」


 マントの裾をはためかせ、突進する。


 巨大な槌を振りおろし、振り回し、片っ端からブルーノを潰していく。


 骨を砕き、割り、肉を潰し、割き、弾け散る血を存分に浴びながら。

 瞬く間に三十人ほどのブルーノを皆殺しにする俺。


「どうした? またお前を守る者はいなくなったぞ?」

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