18 今、あの日の想いを4

 俺はブルーノのナイフを見つめた。


 こちらは神器ではなさそうだ。

 なんの変哲もない、小ぶりなナイフ。


「一つ、訂正しておくぜ」


 そのナイフを腰だめに構えるブルーノ。


「俺が特性を話した理由──正確には『バレたところで絶対に殺されない』ってことじゃない」


 告げて、奴の姿がぼやける。

 次の瞬間、ブルーノは二十人に増殖した。


「こいつ……!」


 これほど大量の分身を作れるのか──!?


「『バレたところで、お前を確実に殺す自信がある』からだ。そして俺の神器でお前を徹底的に恐怖させてやりたいからさ! そら、いくぜぇっ!」


 本体と分身、合わせて二十人のブルーノが四方から殺到する。


「お前は強く、速い。だがこれだけの数の俺の攻撃に、同時に対応できるかぁ?」


 勝ち誇った笑みが響き渡った。


「調子に乗るな」


 俺は構わずヴェルザーレを振り回した。


 二十人もいれば、適当に振っても誰かには当たる。


「ぎゃあっ!」

「ぐげぇっ!」


 ぐしゃっ、ぐぢゅっ、と音がして、二人のブルーノが血と骨の混じった肉塊と化した。


 残り、十八体。


 俺は両腕の筋力を総動員し、縦に、横に、斜めにとヴェルザーレを続けざまに旋回させる。

 これは攻撃でもあり、同時に奴らを近づけさせない防御でもあった。


「ち、ちいっ……!」

「あんなバカでかいハンマーを、こんなにも速く振り回せるのかよ!?」


 動揺したようなブルーノたちを、一人また一人と潰し、殺していく。


 気がつけば、残りは五体。


「あっという間に数が減ったな。そろそろ本体に当たるんじゃないか?」


 俺は鮮血にまみれた槌を肩に担ぎ、ブルーノたちを見回す。


「なんだよ、お前の動き──」

「ここまでとは……化け物か……!?」


 奴らの顔は蒼白だった。


「さあ、じわじわと恐怖を味わわせ、今までの罪を後悔させてから殺してやる」


 俺はかすかな笑みとともに言い放つ。


「たっぷりと、苦しませて──な」

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