17 今、あの日の想いを3
「へえ……容赦なしかよ……」
ブルーノが後ずさる。
その顔は青ざめ、額から汗がにじんでいた。
「そもそも分身なんだろう? 容赦する必要性すら感じない」
「いや、分身ったって……人間の姿をして、人間と同じ反応をするんだぜぇ? それをまったく躊躇なく潰し殺すってのはどうなんだよ」
「お前に言われたくない」
俺はブルーノをにらんだ。
念のために『魔眼』を作動させたが、罪の値や罪状はさっきの分身と同じだった。
──いや、これは。
「姉さんを乱暴したのは、お前だったのか。大勢の男ではなく、お前とその分身たちが」
そのことに気付く。
姉さんはこいつと分身たちに寄ってたかって犯されたのだ。
面白半分に。
ただ快楽目的で。
反吐が、出る。
「ん? なんのことか分からんが、分身を作ってそいつらと一緒に女どもを犯し尽くすってプレイはしょっちゅうやるぜぇ。せっかくの獲物を他の男どもと分け合うなんてつまらないだろ? だから自分一人でたっぷりと楽しむのさ」
下種な台詞を吐いてニヤニヤと笑うブルーノ。
「まあいいや。ところで──なんで俺がわざわざ種明かしをしたと思う?」
ニヤニヤ笑いがさらに深くなった。
「神器使いにとって、己の神器の特性は生命線。他の神器使いに話すメリットはないよなぁ? にもかかわらず、お前に話したのはなぜだと思う?」
「自信があるんだろう。特性がバレたところで自分は絶対に殺されない、という」
「そんなところだ」
ブルーノが俺を見据える。
「お前、さっき言ったよなぁ? 家族を殺された、って」
「ミゼル・バレッタだ」
俺はブルーノを静かに見返した。
こいつも分身なのか、それとも本体──?
おそらく前者だろう。
わざわざ危険を冒して本体が無防備に姿をさらすメリットがない。
「だが、関係ない」
俺はブルーノを殺す。
分身だろうが、本体だろうが。
「殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺しまくる……!」
「殺気に満ちあふれてるねぇ。じゃあ、ここからは──」
ブルーノが腰からナイフを抜いた。
「殺し合いといこうか!」
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