16 今、あの日の想いを2

「ぐああああああっ……い、いてえぇぇ……いてぇよぉぉぉぉぉっ……!」


 そのブルーノは涙混じりに絶叫していた。

 激痛に体をよじっている。


「俺の家族の痛みを──その数万分の一でも味わったか?」

「か、かぞ……く……?」

「苦しんで、死ね」


 俺はさらにヴェルザーレを振り下ろした。

 右腕を、左腕を、続けざまに叩き潰す。


「ぁ……っ……っ……ぉ……っ……ぃ……っ……!」


 もはや悲鳴すら上げられないブルーノを、俺はもう一度見下ろした。


 さあ、次はどこを潰すか。

 頭は、まだだ。


「まだ殺さない」


 俺はゆっくりとヴェルザーレを振りかぶる。


「た、助けて……」

「助けるわけがないだろう。さあ、もっと怯えろ。恐怖しろ。後悔しろ。祈れ──だけど、絶対に許さない」


 俺はヴェルザーレを掲げ──、


 ざしゅっ!


 太ももの辺りに鋭い痛みが走った。


「何……!?」


 驚いて振り返った俺の前に、


「ははははは!」


 笑う人影があった。


「お前は……!?」


 そこに立っていたのは、ブルーノだった。


 だが、奴はすでに俺がヴェルザーレで四肢を潰している。

 現に、眼下には激痛にうめくブルーノの姿があった。


 じゃあ、こいつは一体……?


「異常なペースで組織の連中が殺されていくから、まさか……と思ったが、やっぱり神器使いだったか」


 前方のブルーノが笑う。


「だが、どんな神器も俺を傷つけることはできないぜぇ。このクラスB神器『分身宝珠ぶんしんほうじゅ』がある限り、な」


 自慢げに告げるブルーノ。

 はだけたジャケットの胸元に、黄白色の宝石がはめこまれたペンダントが見えた。


「特性は名前の通りだ。装着者の分身を作り出す。お前がさっきひどい目に遭わせてくれたのは、俺の分身ってことさ」

「……そうか」


 俺は眼下でのた打ち回るブルーノ──その分身体を見下ろす。


「いてぇ……いてぇぇぇ……」


 そいつは血まみれで、うめき続けていた。


「とりあえず死ね」


 俺は無造作にヴェルザーレを振り下ろす。

 頭と胴体をまとめて潰し、返り血を浴びながら、ブルーノの本体に向き直った。

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