15 今、あの日の想いを1

 お前を、殺す。


「絶対に、絶対に──」


 俺はいつの間にか、自分の考えを口に出していた。

 一度言葉にすると、止まらなくなった。


「絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にぃぃぃぃぃぃぃ……っ!」

「おいおい、急にどうしたんだよ。もっと友好的にいこうぜ、ん?」


 奴の軽薄な態度が、俺の怒りを煮えたぎらせる。


 今すぐ、殺したい。

 燃え上がる憎悪を、ありったけの理性を動員してかろうじて抑えこむ。


「お前は今まで多くの人を殺めた。多くの女性を辱めた」


 ブルーノを見据える。


「思うことはあるか?」

「はあ? 思うこと?」


 笑うブルーノ。


 おどけたように。

 どこまでも軽薄な態度で。


「殺しはとりあえず気持ちいいぜぇ。人間が死ぬ瞬間のビビった顔なんて見てると、自分が神になったような気分になれるからな」


 ブルーノが愉快げに告げた。


「女を犯すのも違う意味で気持ちいいな。はははは、屈辱感たっぷりに俺をにらみつけてくれると、最高に興奮するからなぁ! 一度あの快感を知っちまうと、もう普通に女を抱いても満足できなくなるぜぇ」

「──分かった。もういい」


 俺はヴェルザーレを手に歩み寄った。


 生きる価値のない、クズだ。

 このまま生かしておけば、ブルーノはこれからも人を傷つけ、殺め続ける。


 だから、俺がここで終わらせる。


 そして、何よりも。


「父さん、母さん、姉さん──よく見ていて」


 ヴェルザーレの柄を強く握った。


 強く、強く、握り締めた。


「みんなの仇を、俺が討つから」


 そうだ、今こそあの日の想いを。


 怒りと悲しみ、無念と復讐心──それらすべての想いを果たすときだ!


「だから怖い顔すんなって。もっと友好的に……ぐあっ!?」


 俺は無言でヴェルザーレを振るった。

 奴の両足を粉砕する。


「これで逃げられない」


 俺はマントの裾をはためかせ、左目に赤い輝きを灯したまま、ブルーノを見下ろす――。




※ ※ ※


カクヨムコン6やなろうの方の新作などで多少燃え尽き気味なので、しばらくはボチボチと更新していきます。

気長にお待ちいただけましたら幸いです。

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