14 対峙2

「こいつは……!?」


 今までの連中とは、明らかに違う。


 声にこもった殺気が。

 闘志が。

 迫力が。


「……誰だ」

「ブルーノってもんだ。次は俺が相手になるぜ、小僧」


 廊下の角から現れたのは、四十絡みの男だった。


 猫背で、下からねめつけるように俺を見ている。

 俺は『魔眼』でブルーノの罪を探知する。


「お前……は……!」


 頭の中が真っ白になる。

 思考が混乱し、視界が歪んだ。


 こいつ──。


 ごくりと喉を鳴らした。


 何度も、何度も。


「ん? どうした、今さらビビったのかよ?」


 軽薄な笑みを浮かべるブルーノ。


 対して俺は、ますます表情をこわばらせた。


「そうか、お前か」


 乾いた声でつぶやく。


「あ?」

「やっと見つけた」


 口の端が自然に吊り上がった。


 笑みの形に。


「やっと出会えた」


 全身の血が沸騰するような感覚だった。


 こいつだ。


 俺の父さんや母さん、姉さんを殺した男。


 家族の、仇だ。




 ──第三の神器『審判の魔眼』。


 その特性は対象の罪を読み取り、それを数値化した『罪の値スコア』を計測すること。


 前者に関しては、『殺人』や『強盗』といった具体的な罪状と、その被害に遭った者の詳細が表示される。

 後者に関しては数字だけが表示され、その算出方法は謎である。


 とはいえ、たとえば『殺人』ならこれくらいの数値、『強盗』ならこれくらいの数値、といった大まかな推測は可能なため、俺はその数字を元に辺りをつけ、実際に対象の罪を読み取って、最終的な裁きを下している。


 俺はいつものように『魔眼』の力で、ブルーノと名乗った男の罪状を確認した。


 表示されたのは──。

 殺人、傷害、監禁、恐喝、強盗、婦女暴行。


 最初の被害者には俺の父さんや母さん、姉さんが、最後のには姉さんが含まれていた。


 全部こいつがやったことか……!


 殺人の数は全部で170。

 他の構成員と比べても、突出して多い。


 おそらく組織の殺し屋的な役割を担っていたんだろう。

 姉さんへの凶行に関しては、他にも複数の犯人がいるはずだ。


 ここまでの道のりで、そいつらを見つけることはできなかったが……。

 まずは、こいつだ。


 その後で、残りも必ず見つけ出し、必ず殺す。

 地の果てまでも追いかけ、絶対に殺す。




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