13 対峙1

 俺は『鮮血の牙クリムゾンファング』のアジト内をまっすぐ進んでいた。


 構成員に出会うたび、『審判の魔眼』で罪状を確認し、抹殺する。

 その途中で得た情報によると、アジトの中核は地下にあるようだ。


 俺は地下一階へと進んだ。

 そこでも同じように構成員たちを次々に殺しながら、ひたすら進む。

 目指すは組織のボスのところである。

 と、


「おっと、そこまでだ」


 立ちはだかったのは、騎士甲冑を身に着けた壮年の男だった。


 甲冑はあちこちに傷があり、血の汚れや鉄サビなどを見ても、かなり使いこまれた様子だ。

 他の連中とは段違いの手練れらしい。


「この俺は元王立騎士団・第7番隊の副隊長補佐代理代行を務めたこともあるんだ。お前のようなガキに舐められてたまるか」


「副隊長補佐代理代行……どの程度偉いのか、よく分からない役職だな」

「むう……そこに気づくとは、天才か」

「とりあえず──代理だろうと代行だろうと関係ない。殺すだけだ」

「代理とか代行の部分を強調するんじゃないっ。俺の『なんかすごそう感』が薄れるだろうがっ!」


 騎士崩れが怒り出した。


「仮に王立騎士団の団長だろうと、俺の道は阻ませない」


 ヴェルザーレを手に、俺は突進する。


「そんな重い武器、懐に飛びこんでしまえば!」


 騎士崩れはフェイントを交えながら側面から俺に迫った。


「なるほど、他の連中とは違うか」


 王立騎士団にいただけあって、なかなか様になった動きだ。


 少なくとも素の俺よりはずっと強い。

 レナやジークリンデに比べれば一歩二歩劣る──といった感じか。


「さあ、終わりだ!」

「お前が、な」


 得意げに剣を突き出した男よりも速く、俺はヴェルザーレを叩きつけた。


「がっ……!?」


 驚愕の混じった苦鳴をもらし、男はグシャグシャの肉の塊と化して死ぬ。

 死体を一瞥し、俺はさらに進む。


 ほどなくして、今度は戦士風の身なりの男が立ちはだかった。


「ここから先は通さんぞ! この俺は元第三等級の傭兵で──」

「そういう元なんとかって肩書きはどうでもいい」


 俺は血まみれのヴェルザーレを肩に担ぎ、冷ややかに告げた。


 魔眼で男の罪を探知する。

 結果──有罪。


 神の槌を振り下ろし、傭兵崩れを叩き殺した。


「どうせ殺すだけだ。名前も地位も覚える必要がない」


 ふたたび進みだす俺。




「──そう言わずに覚えてくれよ」




 前方から、背筋が冷たくなるような酷薄な声が響いた。

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