5 正義の道
今までは、迷いなくヴェルザーレを振るっていた。
俺が殺してきたのは、いずれも死んで当然と思える殺人者ばかりだった。
だけど、さっきの奴らは少し違う。
悪には違いないが、人の命までは奪っていない。
「だけど、『鮮血の牙』は組織として多くの命を奪っている。そこに所属しているなら罪を担っている、と言ってもいい。だから……だから……」
ああ、分からない。
迷いながら俺は進んだ。
「なんだ、てめえは!」
廊下の向こうから、さらに三人の人影が現れる。
「き、気をつけろ! 向こうで何人か殺されてるぞ!」
「くそっ、他の組織が殺し屋でも送りこんだってのかよ!」
「こ、こっちは三人だ! ビビるんじゃねえ!」
彼らが剣を構えた。
「一斉にかかるぞ!」
突進してくる三人。
三本の刃が別々のタイミングで繰り出される。
狭い廊下では避けづらい連撃だ。
だが、
「うあっ……!?」
俺はヴェルザーレを突き出すようにして破壊フィールドで奴らの剣を砕いた。
『魔眼』を作動して罪の値を測る。
今度は全員が殺人者──始末しても大丈夫だ。
「なら、遠慮なく殺す」
俺は床を蹴って、距離を詰めた。
先ほどの攻撃でよろめいている三人が体勢を立て直す前に、ヴェルザーレを振り下ろす。
「ひっ……」
短い悲鳴とともに、三人はまとめてグチャグチャに潰れた。
肉と骨、内臓などが混じった血だまりが広がっていく。
「……これでいいんだ」
俺はその光景を見下ろし、小さく息をついた。
「正しいことを、したんだ……」
俺は、悪を殺した。
そして、これからも殺して殺して殺しまくる。
そうすることで『鮮血の牙』に苦しめられる人間を増やさずにすむ。
これまで奴らに苦しめられてきた人たちの無念を晴らすことができる。
何も間違ってない。
この行為は、正しい。
だから、つまり。
「俺は──正義の味方なんだ……!」
自分自身に言い聞かせ、俺はどこまでも疾走する──。
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