3 敵地侵入

「ひ、ひいっ……」

「人殺しぃぃっ……」


 受付嬢を潰し殺すと、無関係の商人たちは悲鳴を上げて逃げ出した。


 いったん他の神器を解除し、『指輪』で彼らの認識を変えておく。

 殺しの犯人が俺だと認識できないように……。


「て、てめえ……!?」

「まさか、『黒魔風デモンゲイル』の殴りこみか!」


 残ったのは、商会のメンバー数人だった。

 いずれも剣やナイフを構え、警戒した様子だった。


『黒魔風』というのは、確か『鮮血の牙』と抗争を繰り広げている犯罪組織だったか。

 俺をその一味と勘違いしたんだろう。


 どうでもいいことだが。


「お前らも、死ね」


 俺はヴェルザーレを構え直し、床を蹴った。


『死神の黒衣』の能力で身体能力を増幅ブースト

 そいつらには対応不可能のスピードで、次々とヴェルザーレを振るう。


 数人の構成員は、またたくまに肉塊と化した。

 血だまりと肉片、骨片が散らばる中心地で、俺は一人たたずんだ。


 まだまだ組織には多くの構成員がいる。


「残りを探すか──」


 俺は返り血をぬぐうのもそこそこに、廊下の奥に向かって進んだ。




 廊下は一直線に続く作りだった。

 淡い月明かりが差しこむその廊下を歩いていく。


「ひいっ!?」

「なんだ、お前──」


 突き当たりの向こうから現れたのは、数人の男たち。

 商会のメンバーは全員が『鮮血の牙』の構成員のようだった。


 関係者以外は入れない区域に来たし、ここからは『指輪』を使う機会は減るだろう。

 目撃者の認識を改変する必要はない。


「そもそも、目撃者など残らない。皆殺しだ」


 俺は無造作に進んだ。


 複雑な作戦は必要ない。

 目につく者を──悪を片っ端から殺すだけ。

 そう、ひたすら殺戮を繰り返すのみだ。


「と、止まれぇっ!」

「殺すぞ、てめぇっ!」


 連中がナイフや矢、あるいは魔法で攻撃してきた。


 それらをヴェルザーレを振るって、すべて吹き散らす。


「お前たちの罪を見せろ」


『魔眼』で探知する。


 相手は全部で六人。

 そのうち、殺人の罪を犯している者は四人だった。


「死ね」


 ヴェルザーレを四振りし、とりあえず全員殺しておいた。


「ひいいいいいいいいっ……」


 残った二人がへたり込む。

 こいつらの罪歴は窃盗や強盗のみだった。

 あくまでも暫定だが、俺の標的は殺人の罪を犯した者、としている。


 それを探すにはスコアで大雑把な目安をつけ、実際に対象を目視してそいつの罪を確認する──という手順を踏んでいた。


 いずれはもっと範囲を広げ、討つべき悪はすべてこの世から一掃したいが──。

 今は、まだそこまでの余力はない。


 どうする、殺すか?

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