2 レイズィ商会
レイズィ商会、内部。
何人もの商人が行き来していて、それなりに盛況のようだった。
『指輪』のおかげで、誰も俺に注意を払わない。
まっすぐに受付カウンターに向かった。
化粧は濃いが、受付嬢はかなりの美人だった。
彼女も組織の構成員かもしれない。
「『認識阻害の指輪』──
『魔眼』で彼女を探知すると、その
殺人や強盗、詐欺など一通りの犯罪歴をコンプリートしている、といったところか。
「いらっしゃいませ」
ほぼ同時に、俺の存在を感知した受付嬢が笑顔で微笑んだ。
「ご用件をお伺いいたします」
彼女の左手がさりげなく腰のあたりに添えられるのを、俺は見逃さない。
太ももの辺りに、よく目を凝らさなければ気づかない程度の不自然なふくらみがある。
そこに隠し武器を仕込んでいるのだろう。
ナイフか、あるいはダーツの類か。
この至近距離でいきなり放たれれば、普通の人間なら反応すらできずに殺される。
だが、
「用件か」
俺は無造作に右手を掲げた。
「来い、『
「な、何者──?」
受付嬢は即座にスカートをめくりあげた。
まぶしいほどに白い太ももがあらわになる。
そこに巻かれたベルトには予想通り投げナイフが三本ほど差しこまれていた。
次々に放たれる、三本のナイフ。
ノーモーションかつ超速で放たれたそれらを、俺は最小限の動きで避けてみせた。
「えっ……!?」
驚く受付嬢に、宝玉から解放した巨大なハンマーを振り下ろす。
「ぁ……ぎ、ひ……ぃ……」
血しぶき。
潰れたような悲鳴。
肉と骨が同時に砕け、ひしゃげる音。
一瞬の後、受付嬢はカウンターごとグシャグシャに潰れて肉塊と化した。
「俺の用件は『悪の大掃除』だ」
降りかかった返り血すら心地よく感じながら、微笑み混じりにつぶやく。
周囲に悲鳴がこだまする。
「次は、どいつだ──」
俺は赤く輝く左目で周囲を見回した。
血闘の──始まりだ。
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